また、飲食店が使用するタブレットにも、顧客と飲食店の距離を近くする工夫がある。

「注文したお客さんの顔写真が、アイコンとして見えるようになっています。また、過去の注文回数までわかる設計になっているので、リピートの注文だとわかると、つい嬉しくなってしまいますね」(及川氏)

DeNA子会社元社長が挑む新フードデリバリー、Uber Eatsへの勝ち筋飲食店で利用されているchompy受注用タブレット Photo by N.H.

 Chompyは、龍の子以外にも老舗の個店との提携が多い。なかなか新しいテクノロジーに及び腰な個店が提携を決める理由は、Chompyが「人と人のつながりを感じる場づくりを意識している」ためだ。

「インターネットは便利になりすぎると機械的に見えてしまいがち。でも中身は、人が作ったものを人が運び人へ届けるサービスです。だからこそ、エモーショナルな体験を大事にするため、飲食店と顧客それぞれの人間味が見えるようにしています。特に飲食店には、店自体を知らなかった人達に対してネットを通じて届けられるため、一気に商圏が広がる感覚を味わってもらいたい」(大見氏)

コロナ騒動で頻発した「一時利用停止」の真相

 ベータ版である今だからこそ、サービス開発に注力しながらさまざまな試みを同時進行で進めている。

 その1つが、前述の「グループ注文機能」だ。Chompyの安さを周知するための仕掛けとして、現在は2人以上での注文で配送料は無料、4人以上だと支払い総額の5%を幹事にキャッシュバックするキャンペーンを実施している。

「どれだけおいしい食事でも、1人で食べたがる人は少ない。一方で、大事な人と行くなら、高いお金を払ってでも食べたい人は多い。それほど、人は食を通じてコミュニケーションし、絆を深めようとするところがあります。その満足感から口コミを生み、サービスを広げようとしているところです」(大見氏)

 最近では「グループ注文機能」を拡充し、1社あたり10個単位で弁当を注文できる機能を一部企業に向けて開放。ディナータイムの配達もスタートさせた。

 ベータ版ならではの試みはまだある。飲食店や配達員はもちろん、ユーザーの声を直に受け取れるよう、ビジネス向けのチャットツール「Slack」との連携を実施している。飲食店・配達員・ユーザーそれぞれの意見を直接拾い上げ、コミュニティ形成を図っている。

DeNA子会社元社長が挑む新フードデリバリー、Uber Eatsへの勝ち筋Chompy配達員用のオリジナル・ウェア Photo by N.H.

「飲食店・配達員・サービスの3つが協力し合うからこそ『30分以内の配達』が成立する。そのためには、一方通行なやりとりではなく、フェアな関係をつくる必要があるんです」(大見氏)

 そんなChompyがリリースされてすぐに起こったのが、新型コロナウイルスによる騒動だ。これによって不要不急の外出を控えるユーザーから、フードデリバリーのニーズが急増した。Chompyも例外ではなかった。