しかし、このときのChompyはピークタイムである11時半~12時半にかけて「一時利用停止」する事態に陥っていた。

「配達員の密度が減ると、サービス体験も下がる。その最低値はどこにあるのか、注文が配達員のキャパシティを超えたときにどう対処すべきか。まさに、その限界値を探っていたタイミングでした。ユーザーのみなさまにはご迷惑をおかけしましたが、おかげで閾値を見ることができました」(大見氏)

飲食店・配達員・サービスの掛け合わせ

 フードデリバリーは、ソフトウェア開発はもちろん、配送経路やオペレーション、ローカルへの最適化を行う必要がある。そのため、「参入障壁が高く、経営経験の豊富な連続起業家でも敬遠する傾向がある」と大見氏は言う。

 そうした難しい領域にも関わらず、SYNはDeNA(Delight Ventures)やDCMベンチャーズ、Coral Capital、さらにサンフランシスコを中心に投資を行うGreenoaks Capitalからローンチ前に約2億円の資金調達に成功した。

DeNA子会社元社長が挑む新フードデリバリー、Uber Eatsへの勝ち筋大見周平 東京大学法学部を卒業後、2012年にDeNA新卒入社。入社後2年間は韓国ゲーム事業に従事し、現地マーケティングチームの立ち上げ・新規ゲーム開発を担当。2014年4月から新規事業部署でAnyca(エニカ)の事業責任者を務める。2017年9月、子会社のDeNAトラベル代表取締役社長に就任。2018年5月、DeNAトラベルの株式譲渡にあたり退任し、2019年6月にSYNを創業。 Photo by N.H.

 さらに、2回目の資金調達は2020年夏頃を予定しており、それまでは開発と営業、オペレーションの磨き込みに注力する。資金調達後には配達地域の拡大も考えているという。

「フードデリバリーで特に問われるのが、“ローカル化”です。僕らは、引き続き飲食店・配達員・サービスの3つを強化させながら、まずはローカル中心で仕組みを確立させていく。このビジョンに対して、投資家の方々から評価いただきました。今後はより日常利用できるようにし、街の個店をさらに支える場作りをしていきたい」(大見氏)

 Chompyのさらなる「ローカル最適化」で、Uber Eatsを凌駕する日は来るのか。日本の「食」が彼らのサービスをベースに、世界へ展開されていく日が楽しみだ。