現在はベータ版として、東京都渋谷区を中心にサービスを展開しており、新規ユーザーのうち約4割がリピーターとなっている。さらにユーザー1人あたり週1.8回利用するなど、定着率も高い。
元DeNA子会社社長が「日本の食」で起業
サービスを提供するSYNの代表取締役CEOは、大見周平氏だ。2012年にDeNAへ新卒として入社した大見氏は、すぐに韓国でゲーム事業の立ち上げを担当。2014年には国内に戻り、個人間カーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」を立ち上げた。2017年からはDeNAトラベルの代表取締役社長も務めた実力者だ。かつて一緒に働いていた仲間を集め、2020年2月にChompyをリリースした。
「自分が32歳を迎えたとき、今後一生かけて取り組めて、子どもや孫の世代に『あってよかった』と言われるサービスをつくりたいと思ったんです。少子化などの社会課題により劣化していく日本の衣食住のインフラを支え、いまや世界水準となった日本的ものづくりをさらに磨いていけるサービスは何か。そう考えて、たどり着いたのが“日本の食”でした」(大見氏)
とはいえ、フードデリバリーはUber Eatsのほか、中国などのアジア圏でも多くのサービスがしのぎを削る、“レッドオーシャン”な領域だ。それについて、大見氏は「Chompyの最終ゴールは『新しい食のインフラ』をつくること。(ライドシェアの延長線上のサービスである)Uber Eatsとは目指すゴールが違う」と話す。
「海外に食を広めるには、現地に実店舗を置く必要があります。これがネックで、多くの飲食店が海外進出を諦めてしまう。ですが最近では、デリバリーやテイクアウトのみの飲食店も増えているんです。そこで、レシピや仕入れのフローを構築して、実店舗なしで海外展開できる仕組みを作りたいと考えました」(大見氏)
日本の食文化を海外に届ける第一歩として目をつけたのが、国内でのフードデリバリーだったのだ。ランチタイムの飲食店は忙しく、実店舗だけで売り上げを上げるには限界がある。Chompyはそういった飲食店と連携し、「店舗から30分圏内」に購買範囲を広げ、売り上げとともに顧客を増やす橋渡し的立ち位置を担う。
老舗の料理屋にも愛されるサービス設計
東京・原宿で1977年から営む老舗中華料理店「龍の子」は、今年1月からChompyに出店している。
オーナーの及川美代子氏は、「以前からお弁当は販売していましたが、調理後すぐに提供できないのが悩みでした。中華料理は熱いうちに食べてもらうのが理想。Chompyは配達速度が速いため、デリバリーでも温かい料理を食べてもらうことができる」と笑う。