シェアリングサービスの各事業者は、新型コロナ感染症からそれぞれ異なる影響を受け、さまざまな対応を行ってきている。各社のコロナ禍への対応や、コロナとの共存時代に向けたシェアリングエコノミーの将来への見解について、シェアリングエコノミー協会の会員企業4社に話を聞いた。
移動減による影響を受けつつも
リニューアル進める「アイカサ」
「アイカサ」は傘のシェアリングサービスだ。スマホで街中のスポットに設置された傘をレンタルでき、雨がやんだら最寄りのスポットに返却するアイカサは、関東・福岡・岡山でサービスを展開する。2020年5月時点でのスポット数は全国で約900カ所、約10万人がサービスに登録しており、6月には関西の一部にも進出を予定している。
アイカサスポットは、主に繁華街の店舗や駅などにあり、特に鉄道会社との提携による駅・沿線での設置数が多い。アイカサを運営するNature Innovation Group代表取締役の丸川照司氏は、新型コロナ感染症の影響について「外出自粛により、街中での利用者が減少した」と語る。アイカサには使い放題のサブスクリプション型プランもあるが、基本プランは24時間70円(月額上限420円)で利用回数に応じた課金になるため、利用機会の減少は同社には痛手となっただろう。
2018年12月のサービス開始当初のアイカサは、LINEの友だち登録を利用して提供されてきたが、6月8日に独自アプリを公開し、東京・横浜・大宮エリアでは貸し借りしやすい形にスポットもリニューアルされた。同時に傘自体も修理しやすく、より丈夫で撥水性の高いものに取り替えられている(福岡・水戸ではLINEを使った旧タイプのサービスを当面継続)。
「リニューアルは新型コロナ感染拡大前から予定していたもので、4月に入れ替えを計画していた。緊急事態宣言の発令で作業を少し遅らせたが、プロダクト入れ替えのため、5月7日から6月7日までは対象エリアのサービスを休止したので、ちょうどタイミングが合った形だ」
影響は受けつつも、アイカサでは新型コロナに対し、企業として何ができるかも模索している。「人の活動の一部がオンラインに移行するのは確か。ただし、オフラインで活動しなければならない人もいる。そこでやむを得ず外出する人のために、消毒用アルコールを4月16日から一部のアイカサスポットに設置することにした」(丸川氏)
「雨に濡れて風邪を引くことが感染リスクにつながる可能性を考えれば、サービスそのものも役に立っているのではないか」という丸川氏。「コロナ禍がどこまで続くか分からないが、完全にリスクゼロにすることは難しいだろう。その間、スポットを生かしながら、手の消毒や傘のレンタルで支えていければ」と語っている。