Apple Silicon搭載のMacは2020年内に最初の製品が出荷される。移行期間は今後2年を見込み、しばらくはIntel CPU搭載のMacと新しいApple Silicon採用のMacが併売されるかたちが続く。今回の発表の後にも、Intel CPU搭載のMacを発売する計画もあるとしている。
脱Intelで実現する「iPhoneアプリが動くMac」
新たなMacで採用されるApple Siliconは、これまでのiPhoneが採用していたAppleの自社設計のCPUをパソコン向けに強化したものだ。CPUはAppleが英Arm社のライセンスを元に設計する、いわゆる「Armベース」となっている。
ソフトバンクが買収したことでも知られるArmは、CPUの元となる「設計図」のライセンスを考案して提供する会社で、2020年現在、市場で販売されているスマートフォンのほとんどはArmの設計図をもとにしたCPUを搭載している。
アップルはArmベースのCPU設計を手がけていたベンチャー企業P.A. Semiを2008年に買収し、iPhone向けのチップセット「Apple A」シリーズを自社で設計してきた。iPhone向けには2019年のiPhone 11シリーズで搭載されたApple A13で10世代目となる。Aシリーズのチップセットはこれまで出荷された20億ものiPhone・iPadに搭載されている。
その性能も初代iPhoneから飛躍的な進化を遂げており、iPhone 11の処理能力は、スマホの頭脳にあたるCPU性能で初代iPhoneの100倍、グラフィック処理を担うGPU性能は1000倍にも上るという。アップルはこのiPhone向けチップセットをMacに搭載するために、数年かけて研究開発を続けてきた。それがついに、正式に発表されたことになる。
Macの基幹部品をiPhoneと共通化するメリットは分かりやすい。Apple Silicon搭載の新しいMacでは、iPhoneやiPadのアプリのほとんどが、コードの再設計なしでそのまま動作するという。
アップルが2008年にオープンしたApp Storeは、世界の2大スマホOSの一角を独占するアプリストアとして成長し、いまや同社いわく年間5000億ドル以上の課金と販売をもたらす「経済圏」となっている。2011年にはMac向けのApp Storeもオープンしたが、もともとインターネット経由でアプリを自由にダウンロードして使う文化があったMacでは、App Storeのアプリの拡充ペースはゆるやかだ。