OneNDAでは「ウェブ上に公開されたNDAの統一規格」を用いることで、契約締結に至るプロセスを簡潔にするプロジェクトだ。今回はその全体像やもたらされる変化について酒井氏とHubble代表取締役CEOの早川晋平氏に話を聞いた。

必要なのはNDAの統一規格に賛同するだけ

他社とビジネスをするにあたって「まずはNDAを締結させてください」「雛型を送るので内容の確認をお願いします」といったやり取りが発生することがよくある。NDA締結の典型的なシーンだろう。

通常NDAは取引の開始前に個別に締結される。当事者のどちらかが雛形を用意して、もう一方がその内容を確認しながら契約を進めていく。

これがOneNDAだと「双方が事前にOneNDAに参加しておくだけ」で済むようになる。

OneNDAのイメージ
OneNDAの契約イメージ

OneNDAでは賛同する当事者間の取引に適用されるNDAの統一規格を作り、内容をウェブ上でオープンにしている。自分と取引先の両方が賛同していれば統一規格が適用されるため、わざわざ個別で契約書を作成したり、内容を調整したりする手間がない。

冒頭で触れた通りNDAの締結にあたっては契約書の作成、レビュー・修正、双方でのすり合わせなどに時間とコストがかかっていた。取引先の数が多い企業の法務担当者は特に負荷が大きく、外部の弁護士などにレビューの依頼をする場合などはリーガルコストがかさむ。NDAが締結されるのに時間がかかってしまうと、その分ビジネスの話を進められない期間も伸びてしまう。

OneNDAではその時間とコストを取り除き、ほんの数分で取引を開始できるようにすることを目指している。

「御社はOneNDAに参加してますか?」「はい、してます」「でしたらすぐに情報を共有しますね」ーー。思い描いているのはそのような世界観の実現だ。

「『NDAの締結をもっとスピーディーにやりたい』『無駄が多くコストもかかってしまっている状態なので改善したい』といった声は以前から耳にしていて、現場のニーズがあることはわかっていました。一方で難しいのが、同時に法的な効力も考えなくてはならないこと。NDAを軽視するのではなく、その重要性を踏まえながらどうすれば実現できるのかをずっと模索してきました」

「その過程で、そもそも契約とは何なのかを改めて考えてみたんです。契約とは意思の合致でその効力が発生するものなので、口頭でももちろん成立するし、サービス利用規約に同意する形でもその効力は発生しており、必ずしも個別で契約書を交わさなければ効力が発生しないわけではありません。そうであれば、秘密保持に関する取り決めも個別にNDAを締結せずとも効力を発生させる形があるはずだと思いました」(酒井氏)