OneNDAが浸透すれば、公平な契約を促進することにもつながる。大企業と中小企業間、企業と個人間で契約をする際には「立場の強い方が自分にとって有利な契約を押し付ける」ようなこともある。統一規格が広く受け入れられるようになれば、そのような不公平な契約が減っていくかもしれない。

「よりフェアな社会を作っていく上でも、民法のように内容が公開されていて、そこにみんなが賛同していくやり方が最も受け入れられう可能性があると考えました。OneNDAには企業だけでなくフリーランスなど個人の方にも参加してもらえるようにしています」(早川氏)

また酒井氏は各自が締結しているNDAの内容をしっかりと把握した上で、情報をしっかりとコントロールすることへの意識が醸成されていくような環境を整えたいと言う。

「NDAを締結しておけば安心というわけでもありません。秘密事項が漏洩等された場合には、その損害を遡及的に回復することは簡単ではありません。裁判での立証のハードルも低くはないと考えます。それよりも重要なのは『この契約によって自分はどこまで情報を渡すべきか』『それを誰に対してどのタイミングでどのように提供するか』といったように、大事な情報を自分でしっかりとコントロールすることです」

「たとえばOneNDAの統一ルールの中で『秘密に扱って欲しい情報は、事前に必ず指定しないといけない』と定めておけば、必ず契約前にジャッジすることになります。自分たちの秘密情報をどのように守っていくべきか、それをきちんと認識できる仕組みにしていきたいと思っています」(酒井氏)

契約締結の業務負担を削減するだけであれば、AIレビューシステムが同じような役割を担える。中長期的には契約の当事者が共通の認識を持った上で、双方がしっかりと秘密情報の管理について考えるようになることがOneNDAの価値になるというのが酒井氏の考えだ。

契約の形そのものをデザインすることで業務の抜本的な変革へ

OneNDAを手がけるHubbleは2016年創業のスタートアップだ。2018年にWordで作成した法務ドキュメントの管理・共有をサポートする「Hubble」のテスト版をローンチ。翌年から本格販売を始めた。

Wordで作成した法務ドキュメントの管理・共有をサポートする「Hubble」の利用イメージ
Wordで作成した法務ドキュメントの管理・共有をサポートする「Hubble」の利用イメージ

Hubbleには法務担当者が使い慣れたWord形式の契約書をボタンひとつでクラウド上に自動共有する機能を始め、バージョン管理や契約書にまつわるコミュニケーションを一元化する仕組みなどを搭載。シンプルながら現場のニーズに応えるシステムとして導入が進み、現在は三井不動産やカシオ計算機といったエンタープライズ企業を中心に活用されている。