日本にいれば、基本的には日本の民法が適用される。そしてその内容は誰でも確認できる。同じようにOneNDAというコンソーシアムに所属すれば、参加者の間ではOneNDAの規格が共通認識として適用される仕組みを作ったらいいのではないか。こうしてOneNDAの構想が生まれた。

Hubbleでは今回のサービスローンチに先駆けて、6月にティザーサイトを公開している。SNSではちょっとした話題にもなって、酒井氏の元にも現場の担当者を中心に共感の声が多数届いたそうだ。

その反面、一部では「M&Aなどのように機密説が高く、複雑な契約の場合はどうするのか」といった懐疑的な意見もある。それに対するHubbleの考え方は、OneNDAにマッチしない時は今まで通り個別でNDAを作成すればいいというものだ。

「民法に定められている内容を修正したい場合に当事者間で契約書を作っているのと同じで、OneNDAで対応できない場合には個別でNDAを作ることも可能です。そこはどちらかだけしか使えないのではなく、両方が共存して使えるものだと周知していけば理解は得られると思っています」(酒井氏)

もともと酒井氏や早川氏自身も全てのケースでOneNDAが適しているとは考えていないという。NDAの中にはものすごく複雑で専門家が時間を使ってしっかりと検討すべきものもあれば、そこまでリスクが高くなくスピードを優先した方がいいものや慣習的に締結されてるものもある。OneNDAが特に相性がいいのは後者で、前者についてはOneNDAに賛同しているからといって無理に統一規格に沿って進める必要はない。


法務の専門家でなくても契約内容を正しく理解できる仕組み目指す

従来は百社百様だったNDAの統一規格を作ることによる効果は、リーガルコストの削減やNDA締結の迅速化だけに留まらない。

早川氏は自身の体験も踏まえて「法務のバックボーンがない人でも、自分の契約の内容を自身で正しく把握することに繋がる」と話す。

「自分自身、相手先から送られてきたNDAにどんなリスクが潜んでいるのかがわからず、外部の弁護士にチェックをお願いすることがよくありました。そこまで複雑な取引でない場合には、自分も含めて法律の専門知識がない人でも自信を持って判断できるような契約の形を実現できないか。そんな仕組みをずっと考えていました。OneNDAはリーガルチェックにかける時間や費用を減らすだけでなく、誰もが契約の内容を理解できる基盤にもなり得ると思っています」(早川氏)