「シード期からスタートダッシュを決めたいとき、もっとも根幹的な課題になるのがエンジニア不足。どんなに優れたアイデアのサービスであっても、その開発を担うエンジニア集団がなければ勝ち残ることはできません。欧米型のスタートアップスタジオは、ビジネスを生み出すことに重きを置いた体制であることが多いため、開発リソース不足という課題については解消することが難しいんです」

 その点、サンにはすでに1000人を超える規模のエンジニア集団がある。このため「ゼロイチ段階のサービスであってもスピーディーにスケールさせることができるのではないかと考えた」(梅田氏)という。

「スタジオに持ち込めばかたちになる」を浸透させる

 サンでは、シード期のスタートアップを初期段階から支援する「Build」と、ミドルからレイター期のスタートアップや企業の新規事業の成長を支援する「Boost」の2つのスキームを用意している。このうちBoostは同社の以前からの取り組みに近く、Buildについては今回はじめての挑戦ということになる。「現在すでに複数のスタートアップに取り組んでいるが、支援内容はさまざま。各社それぞれの課題に合わせてスキームを考えている」(船木氏)という。

 そのBuildに選ばれた1社が、店舗物件とテナントのためのマッチングサービス「テナンタ」だ。今年2月に設立し、6月にサービスのベータ版をリリースしたばかりというスタートアップで、現在はサンのオフィスに“同居”して「必要に応じて支援を受けている」とテナンタ代表取締役の小原憲太郎氏は話す。

「サンからは、出資を受けるとともに、1人のエンジニアをテナンタ専任のCTOとして迎えています。そのほかデザインやマーケティングなどについても都度協力してもらったり、将来に向けた事業計画について相談したりと、臨機応変に支援してもらっています」

 サンにとって、テナンタとの取り組みは「Buildの最初のテストケース」(船木氏)。こまめに課題や進捗を確認しながら支援のフォーメーションを決定している。そうした実際のケースを検証しながら、当面は「年間30社をゼロから立ち上げるのが目標」(梅田氏)だという。

「われわれとして目指しているのは、『アイデアやプロトタイプをスタートアップスタジオに持ち込めばかたちになるんだ』ということを浸透させることです。そのために実績をどんどん積んでいきたい。まずは、起業したいという人に『スタートアップスタジオっていうものがある』と知ってもらうことが肝心だと思うんですよ」(船木氏)