配車サービスを開発したのは、AIベンチャー・サイシードだ。山三交通のうれしい誤算を受けたサイシードは2019年8月、勤怠システムを組み込んだ“LINE内アプリ”を作った。これにより、打刻だけでなく有休消化日数までも、LINEのチャットベースで確認できるようになり、導入直後であるにもかかわらず、山三交通の従業員の8割が使いこなせるようになった。

自社開発アプリは廃れる

 近年、企業の自社アプリ開発がトレンドだ。モバイル対応が求められ、アパレルブランドや家電量販店など消費者向けのサービスはもちろん、新卒採用やインナーブランディング用のアプリまで、業種業態問わずアプリが量産されてきた。一方で、課題も多い。

「企業ごとにアプリが分かれていて、それぞれUIが違うと消費者は面倒ですよね。プッシュ通知もたくさんきてしまうし」(サイシードの中村陽二社長)

7年使われなかったアプリも大盛況、「LINE内アプリ」が流行るワケサイシード・中村陽二社長 Photo by Karin Hanawa

 ホーム画面がアプリで溢れてしまい、ダウンロードしたもののほとんど使わない“ポイントカード現象”が、多くの消費者のスマホ内で起こってしまっているのだ。さらに、企業にとっても、アプリ開発費は高額で、UIの設計などの手間もかかるため負担は大きい。

 これが、プラットフォームをLINEに変えるだけで、一気に解決される。

「ITリテラシーの低い人でも、LINEは使っている。LINEをプラットフォームにした時点で、“使いこなす”という一番高いハードルをすでに超えられているんです」(中村社長)

 LINEの国内アクティブユーザー数は、2019年4月時点で月間8000万人を超える。そのうち、50歳以上が29.8%も存在するのだ。

 企業ごとのカスタマイズが得意なサイシードは、3年前からLINEをプラットフォームとして、メーカーや卸売業者へのBtoB受発注システムや、営業日報、不動産の入居者管理など、あらゆるアプリを提供している。

 プラットフォーム側であるLINEも、こうした“LINE内アプリ”の活性化には積極的な姿勢だ。2019年6月27日に行われたLINE CONFERENCEにて、新サービス「LINE Mini app(ラインミニアプリ)」の搭載が発表された。これまで、チャットボット形式の企業アカウントがメインだったところを、決済機能やクーポン、予約などのあらゆるサービスをLINE上でアプリ化できるようになる。

園芸相談サービスもLINEで登録者2倍に

 サカタのタネは、園芸の専門家が家庭内菜園の育て方や悩みに回答する「サカタコンシェル」というサービスを、LINE内アプリで提供開始した。