東日本大震災以降、空前の“家庭菜園ブーム”が続いており、2011年に家庭内向け野菜苗ブランド「おうち野菜」シリーズをリリースした。競合ブランドが多数ある中で、サカタのタネのOBが在宅相談員となり園芸相談の対応をする「サカタコンシェル」は、わかりやすい付加価値となり、販売店から受注が相次いだ。

7年使われなかったアプリも大盛況、「LINE内アプリ」が流行るワケ在宅相談員の丁寧な対応が人気だ(提供:サイシード)
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「園芸に長年携わってきた相談員たちが丁寧に返信してくれる、温かみのあるサービスが評判です。24時間以内に長文で返信がくることもあり、管理している私も驚くほどです」(サカタのタネ・苗木球根統括部の堤洋祐課長)

 実はこの「サカタコンシェル」は、当初はシャープと共同開発したスマホアプリとしてリリースした。しかし、商品自体の店頭導入や消化率は悪くないにもかかわらず、アプリのユーザー数は伸び悩んだ。

「電話でのお客様対応の体制もすでに整っていたこともあり、メインターゲットである60代以上の方は、アプリよりも電話の方がハードルが低かったのだと思います。また、アプリのUIが悪くダウンロード後の離脱も多かったです」(堤課長)

 7年ほどアプリを運用し、キャンペーンや広告出稿も行い試行錯誤したが、想定していた目標値の10%にも満たないダウンロード数だった。また、ダウンロードまで漕ぎつけても、そこから一度でも質問をした人は全体の半分に満たなかった。

 そこで、スマホを持っている人であれば、だれでも使っているLINEの活用を考え始めたという。

「LINEは最近だと70代の方でも使いこなしていたりしますよね。園芸相談員に相談しやすい設計を一番に求めていたので、ぴったりでした。開発費はスマホアプリを0から作ったときの半分以下で済みましたし、元々LINEのUI上にアプリを載せる形なので設計の手間も少なく、やらない理由はありませんでした」(堤課長)

 2019年からLINE内アプリへ切り替えると、これまでと露出量は変えていないにもかかわらず、登録者が2倍に増えた。しかも、50代以上の増加率は若年層の2.4倍だ。

「アプリで1回以上質問をした人の数は登録者のうち8割を超え、ロイヤリティも高まりました。あと、以前よりも軽い質問が増えましたね。なじみのあるLINEで質問できるので、チャットのハードルが下がったのだと思います」(堤課長)

   サカタのタネは、対人の温かみのあるサービスを継続しながら、対応履歴を蓄積してAI活用へ発展させていく可能性も見据えている。