1つは「在留資格」の問題だ。在留資格とは、外国人が合法的に日本に滞在するために必要な資格のことで、細かな分類で合計33種類ある。職種や配偶者の地位などで種類が分かれており、滞在可否や滞在期間、また、滞在中にできる活動内容が変わる。この資格の取得条件が厳しく、日本で就労できずに帰国してしまう外国人が後を絶たないのだ。

 政府もこの問題を改善しようと動いており、2019年4月に改正出入国管理法を施行し、在留資格の制度にてこ入れをした。具体的には、これまで5年以上の滞在が認められていなかった単純業務(漁業、宿泊業、建設業、外食産業など14分野の特定技能)での就労で、追加5年間、つまり最長10年の滞在を可能にした。これにより、外国人労働者受け入れの門戸が広がった。だが、在留の障壁はいまだ高いままなのが現状だ。

 一番のネックになっているのが「在留資格取り消し制度」だ。これは、外国人労働者が在留資格に応じた活動を3ヵ月以上行わないで在留した場合、在留資格を取り消すというもの。3ヵ月以上就労できない状態が続くと、強制送還される。「転職したいけど、3ヵ月以内に職が見つかるのか」と不安を抱えて職の自由を失っている外国人も多い。

 もう1つの要因は、「日本企業側の理解不足」だ。パナソニックのような一部のグローバル企業やメルカリのようなメガベンチャーでは外国人採用に積極的だが、採用されるのはエンジニアやコンサルタントなど、ハイクラス人材が中心だ。それ以外の企業では、人種も文化も違う外国人の正規雇用はリスクがあると考え、採用に尻込みする企業の方が圧倒的に多い。そのため、ハイクラス人材以外の外国人は、人手不足が深刻なサービス業などでの非正規雇用しか枠が残されていないのが現状だ。

日本語能力があっても就職できない高いハードル

地方創生のカギを握るのは「外国人労働者」かもしれない企業説明会に参加する外国人 Photo by K.H.

 外国人の就職活動において必ず必要になるのが、日本語能力試験の資格だ。日本国際教育支援協会と国際交流基金が主催する日本語能力試験は、N1~N5まで5段階に分かれており、一番難易度の高いN1は、新聞の論説や評論レベルの、複雑で抽象度の高い文章の読み書きが求めらる。日本人でも解けない問題があるほどだ。

 ゴーウェルには、2019年7月時点で約4000人の外国人の登録があり、その8割がN1、N2の取得者だ。さらに、法務省が定める優秀な外国人を優遇する制度「高度人材候補」に選出された外国人が全体の43%を占める。

「登録を希望する外国人があまりにも多く受け入れきれないので、語学のレベルで縛りを設けて登録人数を制限しています。実際、どんなに優秀でもN1かN2レベルの学生でないと、採用をするかしないかという議論にすらならないのが現状です」(松田氏)