第一印象は「オタクっぽい子」

「鶴ちゃんの第一印象ですか。最初は正直、オタクっぽい子が入ってきたな、と思いました。少しぼーっとして見えたし、『インターネットが好きだ』と言っていたし」——鶴岡氏を「鶴ちゃん」の愛称で呼ぶのは、BASE共同創業者で取締役の家入一真氏だ。鶴岡氏への最初の印象は、何度か話す中で変わっていったという。

「『インターネットが好き』とは言っていたんですが、サービスやスタートアップを調べていて、とにかく詳しかった。英語はできなかったんですが、当時から国内外のメディアを見ていて、『こんなサービス出たんですよ、知ってますか?』といつも連絡をくれたんです」

「Livertyを通じて若い人たちとサービスを作り始めた頃から、一緒にいて、話す時間が増えたんですが、気付いたら、誰かと打ち合わせするときには、いつもそばにいるようになっていました。あとから聞いてびっくりしたんですが、当時は僕のSNSをチェックして居場所を見つけて、そこに合流していたそうです。ですが、それくらいの行動力がありました」(家入氏)

 その頃から鶴岡氏は家入氏がいる場所を見つけては、直接おもむき、ネットやビジネスの話をしていた。のちにBASEに出資することになるメルカリ創業者・代表取締役社長の山田進太郎氏、ベンチャーキャピタル・イーストベンチャーズ(EV)の松山太河氏など、起業家・投資家仲間らとの親交も家入氏を通じて生まれた。鶴岡氏と家入氏は、取締役会など社内のミーティング以外でも、毎週のように話す時間を作っているという。家入氏は会社を超えた2人の関係性について次のように語る。

「なんなんですかね。歳は離れているけど、先輩後輩のような、“上下”じゃない関係です。友人なんですかね。ただ最近は鶴ちゃんに学ぶことのほうが多いんです。上場や調達の手法ひとつとっても、僕の(paperboyで上場した)時とは状況が違うので、教えてもらっています。見た目はふわっとしていますが、ロジカルに考える人間ですね。でも本質は今も昔も変わってません。暇さえあれば海外のスタートアップやIRに関するニュースを読んだりして、勉強しています」(家入氏)

「別に起業したいとは思っていなかった」

 エンジニアとしてLivertyに関わっていた鶴岡氏。いつしか自らのプロダクトを作りたいと思うようになっていた。そこで開発を始めたのがBASEだった。大分県で小売業を営む母親の「ECサイトを作りたいが、既存のサービスは難しくて使えない」という話が、開発の動機になった。また、Livertyでサービスを開発する中で今後「決済」が重要になる、と意識していたという。