そうですね。やっぱり経営者としての愛の伝え方はコミュニケーションすること。そして賞与や金銭的報酬と、組織のプロモーション的な報酬や評価ですよね。評価をきっちりフェアにするというのはすごく大事だと思っています。

勝てる勝負かどうかを見極めるのも経営者の役割

――若い人に責任を与えるのも愛なんでしょうか。信頼と愛を同時に伝えるというか。

 そうそう、権限委譲ですよね。でも権限委譲は僕の中ではまだ試行錯誤なんです。いっぱい失敗してきたので。権限委譲は手段であって目的であってはいけません。僕らは経営者として、事業をうまくやることが責任なので、その手段として機能するなら、権限委譲をしましょうと。

 たとえば10の能力の人に100の仕事を与えたら壊れてしまいます。だから10の能力の人に12くらいの仕事を与える。そうすると、ストレッチしてくれてうまくいくんです。その人の能力と環境、そしてやってもらう課題の大きさを適切に判断して権限を委譲しないと、逆につぶれちゃうところはあります。

 でも本当にね、結局は人なんです。課題があるチームに、会社にフィットして能力が高い人が来れば、それで課題は終わるんですよね。僕たちが採用に力を入れているのも、人が一番大事だと思っているからです。チームを強くしていくしかないので、能力ある人を採用して、適切なポジションに就いてもらうことが、「回る仕組み」を作るのに一番早い気はします。

 組織の力が100しかないときに200の課題をやれば、どうやっても失敗します。もう無理なんですよ。だから、チーム力がないと勝てない。根性でどうこうしても無理なんです。冷静に勝てる勝負かどうか見極めるのも経営者の役割な気がしています。

意思さえ強く持てば、会社はやっていける

――20人くらいのとき、本当に追い詰められていた状況があると思うんです。その話を改めてお伺いしてもいいですか。

 僕らの場合、プロダクトを作ってもマネタイズにはすごい時間がかかるんです。まずそんなP/Lも立ってないし、キャッシュばっかり出て行くし、目標に到達できなければ会社は倒産するし……。

 いまだに覚えていますけれど、当時会議室もないオフィスだったんで、喫茶店で会計士の先生と話していたことがあるんです。

 当時は僕も焦っていて、「もう(会社は)ダメかもしれません」って言ったんですよ。お金もないしサービスもうまくいかないし……と。そしたら先生は「会社はつぶれないんだ」と言いました。会社に入ってくれた人に頭を下げて辞めてもらって、創業メンバーなど残る人だけ残って、給料をゼロにしたら会社はつぶれないんだと言うんです。