今考えたらむちゃくちゃな話なんですけれど、なぜか僕はそのときすごく救われたんですよ。あ、そうか。会社をつぶすっていうのは「意思」なんだと。自分が意思さえ強く持てば会社はつぶれなくて、なんとかやっていけるんだって思ったんです。
「2カ月でお金がなくなりますよ」
――「つぶしちゃいけない」という気持ちが強かったってことですね。
そう。つぶしちゃいけないし、このままだとダメだと思って。もう真っ暗闇にいる感じですよね。僕らが唯一成功する方法は、プロダクトを世の中に出してユーザーさんに認めていただいて、お金払っていただくことしかなかったんです。今もそうですけど。
あともう1つ話があります。僕らの一番大事にしているバリューって「ユーザーフォーカス」なんです。ユーザーさんに受け入れられるプロダクトを作らないと僕らは存在できないと思っているので、それだけ集中して、ユーザーだけを見て、とにかくユーザーが使うサービスを作ろうと。
ですが当時、そのことばかりに注力しすぎて、お金のことを忘れてたんですよ。CFOとして来てくれた人間がいるんですが、あるときその彼に会議室に呼び出されて、「2カ月でお金がなくなりますよ」と言われました。
うそみたいな話ですけれども、自覚がないんですよ。もうプロダクトに集中しているから。そこから本当に会社がつぶれるかもと思って、必死にVCさんに会いまくって、なんとかギリギリ資金調達が間に合いました。
これもう笑い話ですけれど、本当にお金が振り込まれるかどうか分からないから、払込日に、恵比寿の銀行のATMで、ずっと通帳の記帳をしていました。何回も何回も……。
やっと通帳に記載された金額を見て、「生き残ったー!」と思ったのをいまだに覚えています。本当に何回も記帳に行きました。怪しい人ですよね。それはすごく覚えています。スタートアップには、そういうハードシングスが結構あると思うんですよ。言っても格好悪いんで、あんまり言わないんですけど。
あと僕たちは、いいメンバーが来てくれて、資金調達やプロダクト作り、デザイン、営業と強くなっていった。本当にいい人が来てくれれば、生き残れるかどうかが変わりますね。
不安に耐えるのではなく、仲間とシェアすればいい
――コミュニケーションの問題は信頼と期待値だという話がありましたが、次の世代の起業家は、それをどう学んでいくべきでしょう。
僕がたかだか(起業からの)7年で学んだことなんで、参考なるかどうか分からないんですけど。起業家って不安だと思うんですよ。みんな辞めていくかもしれないし、プロダクトもうまくいくか分からない。不安との戦いなんですけど、負の感情をメンバーにぶつけてもロクなことはないんです。不安に耐える必要はないので、シェアすればいいと思うんですよ。