天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』。鎌田浩毅氏(京都大学教授)「数学“零点”を取った私のトラウマを払拭してくれた」(「プレジデント2020/9/4号」)、「人気の数学塾塾長が数学の奥深さと美しさ、社会への影響力などを数学愛たっぷりにつづる。読みやすく編集され、数学の扉が開くきっかけになるかもしれない」(朝日新聞2020/7/25掲載)、佐藤優氏「永野裕之著『とてつもない数学』は、粉飾決算を見抜く力を付ける上でも有効だ」(「週刊ダイヤモンド2020/7/18号」)、教育系YouTuberヨビノリたくみ氏「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されている。今回は、著者の書き下ろし原稿を特別に掲載する。

【新年の頭の体操】「2024」という数字の正の約数は16個。全部言えますか?Photo: Adobe Stock

「2024」という数の特徴

 2024年になった。新しい年にちなんで「2024」という数の特徴を書きたいと思う。

 2024は約数(割り切れる整数)が多い。正の約数が全部で16個(1, 2, 4, 8, 11, 22, 23, 44, 46, 88, 92, 184, 253, 506, 1012, 2024)もある。

 これは、21世紀の西暦における約数の個数ランキングでは10位タイである(他には2002, 2030, 2079など)。ちなみに第1位は36個の正の約数をもつ2016だ。

 ある数の約数の個数を調べるには、その数を素因数分解する(素数の積に表す)のが手っ取り早い。

 素数とは「1と自分自身でしか割り切れない2以上の整数」のことである。小さい方から書き出すと、2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, …などが素数だ。

 2024は 2024=2×2×2×11×23 と素因数分解できる。素数とは文字通り「数の素」すなわち数の部品であるから、素因数分解とは、その数がどんな部品で出来ているのかを明らかにする「分解」だと思えばよい。

 2024の「部品」は「2」が3個と「11」が1個と「23」が1個というわけだ。一方、ある数の約数は、その数の「部品」の一部あるいは全部を使ってできる数である。

 では、2024の「部品」を使ってできる数は何通りあるかを考えてみよう。2024の「部品」のうち「2」は最大3個まで使えるので、その使い方は「0個、1個、2個、3個」の4通り、「11」と「23」はそれぞれ「0個、1個」の2通りの使い方がある(どの部品も使わなければ1になると考える)。

 よって、これらを使ってできる数の個数(=正の約数の個数)は、4×2×2=16個だ。

 ちなみに、2024の素因数分解は、2025が45×45の平方数(整数の2乗になっている数)であることと、中学で習う「平方の差=和×積」の因数分解を使って、次の様に少々格好良く求めることもできる。

 2024=2025-1=45×45-1×1=(45+1)(45-1)=46×44=2×23×2×2×11

三角錐数

 2024は「三角錐数」と呼ばれる数でもある。みかんを10個用意してもらって、まず6個を正三角形の形に並べ、できた窪みの上に3個のみかんを乗せる。そして最後の1個をてっぺんに乗せれば、全体が三角錐のような形になるだろう。

 このように、球を正三角形状に綺麗に並べたものを何段か積み上げて、三角錐のような形が作れるときの球の総数に相当する数のことを三角錐数という。 一方、球を正三角形状に並べたときの球の総数は、三角数という。

 具体的には 1, 3, 6, 10, 15, … などが三角数であり、これらを足し合わせたものが三角錐数だ。

 1, 4(=1+3), 10(=1+3+6), 20(=1+3+6+10), 35(=1+3+6+10+15), … 2024はそんな三角錐数の22番目の数である。

 一般に、n番目の三角錐数は、n(n+1)(n+2)/6と表されるので、 2024=22×23×24÷6 とも書ける。

連続8整数の立法和

 2024は、次のように2~9の8個の連続する整数の3乗の和で表せる数でもある。

 2の3乗+3の3乗+4の3乗+5の3乗+6の3乗+7の3乗+8の3乗+9の3乗=8+27+64+125+216+343+512+729=2024

 数学では正の整数を3乗した数のことを立法数と言い、立法数の和のことを「立法和」と言う。2024は連続8整数の立法和というわけだ。5個以上の連続整数の立法和になっている西暦は、21世紀では他に、2016(3~9の連続7整数の立方和)と2025(1~9の連続9整数の立方和)だけである。

おまけ:和暦は完全数

 なお、西暦からはずれるが、和暦で言えば今年は令和6年。「6」は完全数と呼ばれる特別な数だ。完全数とは、自分自身を除く正の約数の和が自分自身と一致する数のことを言う(6=1+2+3)。

 完全数は、無数にあることが期待されてはいるが、実際には51個しか見つかっていない。今年は令和になって最初の「完全」な年(次は令和28年)である。

 パーフェクトな1年にふさわしい、良いことがたくさんありますように。

(本原稿は『とてつもない数学』の内容と関連した書き下ろしです。)