“神様”も【神様】を頼る。稲盛和夫と松下幸之助を成功に導いた「神社との深い因縁」とは?Photo:PIXTA

名だたる経営者たちが神様を信仰し、その力を借りて成功を収めてきたことをご存知でしょうか。年末年始、せっかくお参りに行くならば、成功者の「運」にもあやかりたいところ。岩崎弥太郎から稲盛和夫まで、総勢8名の日本を代表する経営者たちが信仰した神社をご紹介しましょう。(取材・文 鳥居りんこ)

※本記事は『神社で出逢う私だけの守り神 神様に力を分けてもらう方法』(祥伝社 浜田浩太郎著)より、一部を加筆改編したものです。

戦前の3大経営者
岩崎・三野村・渋沢

 組織の頂点にいる経営者ともなると、その毎日は常に「決断」の連続。トップに立つ人は常に「正解の道」をひとり思い悩んでいるものです。

 株式会社プラネットの調査によると、会社役員・経営者で神社に行く人は80%を超えているそうです。

 神社での「祈り」の語源は「斎のり」。神々に「心身を清浄にして申し上げる」という意味です。神様に自分の意志を宣言する「意を宣る」が転じて「祈る」になったという説もあるように、神様はその決意を後押ししてくれる存在です。

 経営者たちは、孤高の中で、より力強いリーダーになるために、神社におられる神々の特別な力を味方にしようとしているのでしょう。
それを証拠に、成功した経営者には、必ずと言っていいほどに、崇敬する神社があり、援助や寄進をしたとされます。

 代表的な人物をピックアップしてみましょう。 

1. 岩崎弥太郎……三菱グループの生みの親

 土佐藩の身分の低い武士の出でありながら、幕末の海運業で成功した三菱グループの創設者である彼は、大阪市にある土佐稲荷神社を崇敬していました。

 この神社は土佐藩蔵屋敷に伏見稲荷から勧請された鎮守社ですが、明治初年に、この蔵屋敷と共に、岩崎弥太郎に譲り渡されました。三菱という社名は、岩崎家の家紋と土佐藩山内家の家紋を合成して作ったマークに由来するものです。

 稲荷信仰は商売繁盛のご利益があると言われますが、このような縁で、土佐稲荷は現在も三菱グループの守護神となっています。

2. 三野村利左衛門……三井財閥の危機を救った三井組の大番頭

 三井財閥の中興の祖と呼ばれ、三井銀行の頭取として三井財閥の基礎を築いた山形県出身の人物です。彼は東京都にある神田神社(神田明神)を崇敬しました。

 神田祭は、江戸(東京)を代表する祭りとして知られ、三井系の企業(三井物産・三井不動産など)が数多く参加することでも有名です。

 祭神の中の大己貴命(おおなむちのみこと)・少彦名命(すくなひこなのみこと)は国造りの神々であり、江戸を守る「江戸総鎮守」ですので、お江戸日本橋を本拠地とする三井財閥の神田明神への信仰はごく自然なことだったのでしょう。

3. 渋沢栄一……日本資本主義の父

 農民から武士となり、やがて約五百もの企業を設立した埼玉県出身の大実業家です。日本初の銀行である第一国立銀行の他にも、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行などの設立にも関与しました。

 渋沢栄一が崇敬した神社は東京都北区にある七社神社。イザナギノミコト、イザナミノミコトをはじめ、七柱の神々を祀ります。渋沢栄一は近隣に飛鳥山邸を構え、氏子として信仰しました。

 七柱の神々の中に、三種の神器である八咫鏡を作った神であるイシコリドメという女神がおられます。鏡は、ご神体であることが多く、そのご利益は計り知れません。財界人として多くの社会公共事業にも関わった渋沢栄一も、そのご利益を授かったに違いありません。