ひらめきもないまま、ムダな努力を積み重ねていっても意味がない。耳障りのいい

 言葉だけが広まるのは、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。

 そんな思いから、この本の企画がはじまった。

まずは人生の結論から

 たとえば、僕は、人生に「生きる意味」は存在しないと考えている。

 虫や細菌に生きる意味がないのと一緒で、地球上の生物は地球の熱循環システムの一部としての機能を果たしているだけだ。

 ただ、そう考えることで、「じゃあ死ぬまでにできるだけ楽しく暮らすほうがいいな」と思うことができる。

 幸せの総量を増やすことを目標にすればいいのだ。

 それをうまく教えてくれるものがある。「本」だ。

 いい本を読み終わったとき、「いい本を読んだな」と思うものだが、時間が経つと中身はほとんど覚えていない。覚えていたとしても、検索して調べられる程度のざっくりした内容しか頭の中には残っていないだろう。

 僕はおすすめの本を聞かれると、『銃・病原菌・鉄』(草思社)を迷わずあげる。

 その本は、「ヨーロッパやアメリカの白人が世界を席巻したのはなぜなのか?」という問いに証拠を交えながら答えを出していく。結論を書くと、「ヨーロッパからアジアに続くユーラシア大陸が東西に長かったからヨーロッパの人が覇権を取った」となる。

 エジソンやアインシュタインのような天才が出てきたからではなく、大陸が横に長いと、小麦や米や芋やトウモロコシなど多くの穀物ができ、牛や羊や馬などの家畜も多品種が育つ。それによる差が大きくなっていき、南米やアフリカ大陸が太刀打ち出来ない技術や文化に発展した。

 そこから僕が導き出した答えは、「人類の努力は、ほぼ無意味だ」ということだ。

 いくら人間が頑張っても、大陸の形を変えることはできない。

 僕の生き方は、そういう結論から逆算するようにしている。

「変えられる部分」はどこにある?

 さまざまなデータが、「環境」でステータスが決まってしまう現実を容赦なく突きつける。

 たとえば、東大生の親の6割の年収は950万円以上である。親の年収が450万円未満の東大生は1割しかいない。大学受験のテストは公平である。なのに、教育環境や塾の費用など、お金持ちの家に生まれたかどうかが学歴に大きく響く。

 世界トップクラスのお金持ち26人の資産を合わせると、150兆円にもなり、貧困層の38億人の資産を合わせた額と同じだという。イタリアのフィレンツェには、納税記録が600年前から残っているのだが、その調査によると、600年前に富裕層だった家系は2011年になっても富裕層のままだった。

 さらに、環境だけじゃなく、「遺伝」も絡んでくる。

 学業の成績は、親からの遺伝が60%ぐらい影響すると言われている。