若い人だとネットバンキングを使うのが当たり前だし、ATMがあればお金が下せるので、銀行の窓口なんて近所になくてもそんなに困らない感覚がある。
その一方で、高齢の人だと、ネットバンキングは使わないし、振込みは窓口に行ってやるので、近所に窓口があることが必要になる。
10年後、窓口をたくさん作る銀行と、ネットバンキングの充実とコンビニのATMを使えるようにした銀行のどちらが経済的にうまくいくか。
こんな答えがわかりきった問題ですら、考えの古い高齢者は間違えてしまう。それくらい「考え方のクセ」はなかなか取れない。
若い人にはあと何十年もの人生があるが、いまの時代に必要な知識を持っていない高齢者のせいで損をするのは若い人のほうだ。
年寄りは逃げ切ってしまうから、どうでもいい。
努力をしないで成果が出せる環境はどこなのか。それは、現在の情報や知識を仕入
れて、賢い判断で選ばなければわからない。
自分の頭で考える世代
僕は、1976年生まれの「就職氷河期世代」だ。
この世代の特徴は、「自分の頭で考えることができる」ということだと思う。
僕らより上の世代は、バブル世代であり、時代を謳歌してきた。会社からも守られてきただろう。
彼らの世代が、いま、早期退職でリストラの嵐に巻き込まれている。僕の世代は時代が悪かったぶん、考えることを余儀なくされ、おかげで能力が身についた。皮肉だが、悪い環境には人を育てる側面があり、時代が悪いことがチャンスにもなる。
僕より上の世代は、「昔はよかった」と話す人が多い。
しかし、ちゃんとデータを見ることができれば、昭和の時代より平成のほうが、殺人事件や餓死が少なく幸せの総量は多いことがわかる。
人生で選択肢が目の前にあるときに、どういう基準で考えるのかは人それぞれ違う。
そこには、「判断軸」が存在する。「考え方の考え方」みたいな部分だ。
これについては、僕の経験をもとに教えられるのではないかと思った。
できるだけ長期的な目線を持ち、「よりよい選択肢をとる」というクセがつくように、根っこの部分を書いた。それが、この本だ。
キレイゴト抜きにすべてを語ろう
ある成功者は、「みんな頑張ろう。頑張れば幸せになれるし、頑張らないと不幸になる」と平然と言う。
みんな頑張ったところで、みんなが活躍できてたくさんのお金を稼げるわけではない。努力以外に、能力が必要だ。能力と努力が掛け合わされて、初めて結果が出る。
だから、能力のない人はいくら努力してもムダになる。
みんな、底辺から這(は)い上がった話が好きだ。ツラくても歯を食いしばって我慢してきて、そして成功をつかみとる。そんなハッピーエンドを好む。
でも、現実はそうじゃない。
高い財布を買うと金持ちになるのではない。逆だ。金持ちが高い財布を持っているだけだ。
そうやって因果関係の理解を間違えると、人は不幸になってしまう。
ただ、能力があるのに努力をしない人がたまにいる。
あるいは、「環境」と「遺伝子」の現実を知った上で、自分のできないことを受け入れながら、ちょっとだけ考え方を変えるだけで幸せになれる人もいる。
彼らに向かって、キレイゴト抜きのアドバイスができればいいなと思う。それは、大きな船の舵を切って、1度ずつ徐々に進行方向を変えるような作業だ。
この本では、7つのエピソードを語る。
「前提条件」「優先順位」「ニーズと価値」「ポジション」「努力」「パターン化」「余生」という7つの話だ。
それぞれに、重要な「判断軸」をいくつか与える。
多くのビジネス書では、大事なところが太字になっているが、よく読むと、そんなに大事ではないことまで太字にされている。
この本では、本当の本当に大事な文章だけを太字にしている。
そういうわけで、今回の本は、限界までは僕自身が書き、残りは2年の歳月をかけて編集の人に話を語った。僕なりの「1%の努力」はしたつもりだ。残りの99%を編集者の種岡さんに任せることにする。
それでは、話をはじめよう。