一般研究員が国の審議会に
呼び出されて弁明させられた

 折しも、冒頭の医学雑誌の記事が騒がれていた時期と重なり、家原氏は厚生労働省の審議会に呼び出され、弁明を求められた。

「管理者である澤田先生が呼ばれるべきところですが、平の私が呼び出され、有名な教授や公衆衛生の先生方から延々と質問を受けました。“澤田外し”の意図があったのかもしれません。机の上に高々と資料が積まれていて『この論文にどう反論するんだ』とか『このデータはどういう意味を持っているのか』とか。特に死亡例について『過剰診断ではなかったのか』と繰り返し聞かれたことを覚えています」

 普通に考えたら審議会が質問すべきは家原氏ではない。だが澤田教授が呼び出されることはなく、翌年、マスの休止が決定されてしまう。

「私の答弁が悪かったのかと、ショックでした」

 檜山氏がマスの評価に携わることになったのは、休止が決定した後だった。当時、小児外科学会で悪性腫瘍委員長を務めていた関係から白羽の矢が立ったのだが、休止に至った経緯については「おかしい」と首をかしげる。

「まずカナダの研究ですが、規模が小さ過ぎた。神経芽腫は発症率が非常に低く、100万人当たり150~200人しか発症しません。数十万人の比較調査では、差が出るはずがないんです。またドイツの研究に至っては、検査を受けるグループと受けないグループを、旧東ドイツと旧西ドイツで分けていました。東西の医療レベルは全然違うので、死亡率を比べても意味がありません」

「日本に変化が起きるのは、外圧によってである」とはよく知られた通説だが、マスにおいても国家事業であったにもかかわらず、海外の報告に過剰に反応し、自国での検証・解析を行わないまま休止を決めたのは、いかにも日本らしいと言うべきか。