仕事が忙しくてジムに行く時間も取れない、という人にお薦めしたいのが「Zwift(ズイフト)」。自宅にいながら、24時間いつでも世界中のサイクリストとリアルタイムで競争できるオンラインゲームだ。ペダルを回して自分のアバターを動かすので、実際のサイクリングと同様の運動効果がある。ジムに行く必要もなく、思い立ったらすぐにトレーニングができる。そんな最先端バーチャルアイテムを使って2021年自転車女子ロードレースの日本チャンピオンとなった植竹海貴(ワイズロード)さんにその魅力と活用術を教えてもらった。(取材・文/山口和幸)
単調で長続きしなかったインドアトレーニングに大革命
大規模多人数同時参加型オンラインRPGとでも言うのだろうか。世界各国のサイクリストと画面に表示されたコースを共有して走るという、まったく新しい室内サイクリングを可能にしたのがZwiftだ。バーチャル上でアバターが上り坂に入ると坂の斜度の応じてペダルも重くなる。前を走る選手の後ろに着けば空気抵抗が低減されて楽になる。アプリがバーチャル上の状況変化を自転車を載せたスマートトレーナーに無線で指示を送り、ペダルの負荷を増減させているからだ。
「インドアサイクリングをアウトドアライドと同じくらい楽しく魅力的にしたい。天気や季節といった環境に左右されることなく走りたい」と2014年に開発され、2015年に有料版がリリースされた。退屈なインドアトレーニングをゲーム化し、美しくリアルなバーチャル空間を自宅で再現することで、世界中のサイクリストと愛車に乗って汗をかくことができるというフィットネスエンターテイメントだ。
スポーツ選手をコマンドして実際の映像さながらにプレーさせるテレビゲームは野球やサッカーなどがあり、eスポーツという新ジャンルが誕生した。サッカーではFIFA(国際サッカー連盟)主催のFIFAeワールドカップが開催され、JFA(日本サッカー協会)がA代表と同じウエアを着用させたeスポーツ日本代表を選出して派遣するまでになった。
この場合、日本e代表選手はゲーム操作に非凡な才能を発揮するゲーマーだ。試合を読む経験値や判断力、コマンドする指先の繊細さや反射神経が必要だが、A代表と同じようなフィジカルは当然ながら要求されない。
自転車競技界でもサッカーと同じようにUCI(国際自転車競技連合)主催のeスポーツ世界選手権が開催されるようになった。サッカーとの違いがあるとすればZwiftを使った自転車eレースは、プロ選手並みのフィジカルが必要。つまり室内バーチャルではあっても、運動負荷に大きな差はないということだ。