大規模な災害が発生するたびに買いだめに走るなど混乱する人は多い。しかし、阪神・淡路大震災、大阪府北部地震で2度被災し、さまざまな被災地でレスキュー活動も行い、『レスキューナースが教えるプチプラ防災』の著書がある国際災害レスキューナースの辻直美さんは、災害や防災に対して「さまざまな面で勘違いしている人が多い」と指摘する。今回は、防災グッズの買い方など、よくある4つの勘違いを紹介する。(ダイヤモンド編集部)
※2020年3月11日に公開した記事をもう一度、紹介します。全ての内容は初出時のまま
【災害・防災の勘違い その1】
「自分は大丈夫」と油断してしまう
──これまでレスキューナースとしてさまざまな被災地にも入られていますが、被災した人にはどのような傾向がありますか?
国際災害レスキューナース、一般社団法人育母塾代表理事。看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚める。看護師歴28年、災害レスキューナースとしては25年活躍している。被災地派遣は国内19件、海外2件。被災地での過酷な経験をもとに、本当に使えた防災術を多くの人に知ってほしいと、大学での防災に関する講義・講演や、小中学校での授業を精力的に行っている Photo:Diamond
被災した人たちも、もともとは私たちと同じ普通の生活者です。ある日突然、被災者になり、「まさか自分がそんな目に遭うなんて…」と皆さんおっしゃいます。
そのせいか、実際に災害が起こっても正常性バイアスがかかり、目の前に危機が迫っても映画を見ている感覚で「自分は大丈夫」と思い込む傾向があります。たとえ津波がギリギリまで迫ってもボーっと眺めている人も多いんです。
2016年4月の熊本地震の際は、私自身も「前震」の後にレスキューで入ったため、その後起きた「本震」を体験しました。地震は、発生直後に前震か本震かは判断できませんし、余震もたくさん起こります。つまり、地震は1回揺れたら終わりではありません。ですが、「1度揺れが収まったから」と物を取りに行ったり、避難所から「もう大丈夫だろう」と帰ってしまったりしたときに地震が起き、建物の下敷きになって犠牲になった方もたくさんいました。