【大河「光る君へ」スタート】「私はこうして平安沼に落ちました」ドハマりな2人に平安の魅力を聞いた扇は平安貴族にとってなくてはならないもの。とくに女性はこんなふうに顔を隠すための必需品だった

承香院 そうしてわかった断片的なイメージを補いながら、見えてくるものってあるんでしょうか?

砂崎 ええ。私のようにビジュアル的なセンスがない人間は、逆に脳内の妄想力だけはすごくて、文章からしか脳内に入っていかないんです。だから繰り返し読む。でないと、この一節は人物がこう動いて、こんなしぐさをしてるんだなという、脳内のイメージができてこないので。

承香院 えー。私はもう完全に視覚から入ってきましたので、まったく反対ですね。

砂崎 こうして承香院さまと私は、完全に別の道を来たんですけど、こうやって話していると意見が一致することが多いんですよね。例えば私が文章から妄想して頭の中に作り上げた平安時代の部屋と、承香院さまがビジュアル面から作り上げた部屋が、とても似ていたりする。承香院さまと話していると、文章だけだとモヤモヤッとしていたものの輪郭がはっきりしてきます。

――そもそもお二人はSNSで出会われたとか。それ以前は、研究成果をどうアウトプットしていたのですか?

承香院 私の場合、学生時代は平安にまったく興味のない友人たちをこの趣味に巻き込むことに、力を注いでおりました。例えば小学校のときですが、ベビーカーを牛車風に改造して、友人と行列を作って遊んだり。カーテンですか?はい。みんな私のお願いを聞いて、まとってくれていました(笑)。砂崎さんは?

砂崎 いや、私はひたすら孤独に、原文を繰り返し音読していただけです。大学に入ってからは一般教養の古文の授業に出て、先生の記憶違いがあったりすると、あとで「中務卿宮は明石の尼君の父ではなく祖父です」みたいな指摘をしに行ったり。そのうち「きみは藤井貞和先生のところに行きなさい」と言われ、源氏物語の権威である先生の研究室に毎週お邪魔してましたね。

――最後に「平安沼」初心者へ楽しみ方のアドバイスを!

承香院 平安時代というと現代とまったく別の世界と思い込んでいる方も多い。たしかに違うところはまったく違うものの、根源的には現代と同じ文化を共有している部分もありますよね。同じものを美しいと感じたり、悲しいと感じたり。私はそこがおもしろい。