筆者案と吉本が実際に出した声明では、何が違うのか
なぜこうなるのかというと、「法的措置を取る」という宣戦布告を避けていることが大きい。
このような攻撃的なコメントは、事実無根の風評などで株価が急落した企業などが株主対策で出したりするのは効果的だ。
しかし、一般消費者を相手にするBtoC企業や、松本さんのような「人気商売」の人が使うと逆効果である。「法的措置を取る」というのは「相手をつぶす」ということなので、親しみやすい、人に優しいというイメージの企業や個人ほど「え、そんな怖い人なの?」とギャップが際立ち、イメージが悪くなってしまうからだ。
「代理人を立てて対応する」というくらいの表現にとどめておけば、松本さん的には納得もいかないし、言いたいことは山ほどあるんだけれど、「一緒に飲んだ一般女性がそう言っているなら、そちらの心情を傷つけないようにしますよ」という度量の大きさも感じられる。「事実無根」の一言で突っぱねるより、男性としても、お笑い芸人としてもはるかにイメージがいいのでないか。
しかも、このように「女性が恐怖を感じた」ことへ一定の配慮のある声明を出していれば、「裁判に集中するために活動休止」というような苦渋の決断に追い込まれることもなかっただろう。
「当事者同士で話し合いをしており、その決着が出るまでは自分としては何も話すことはできない」ということを世間に対してしっかりと明言すれば、基本的にその間は「外野」がとやかく言う問題ではない。
報道のインパクト的に、しばらくはスポンサー離れも続くので番組の降板もあるだろうが、吉本は劇場もあるし、ライブやネット配信など、テレビから消えても今はいくらでも活動を続けられるはずだ。
と聞くと、「この低脳ライターめ!被害者がいるような性加害を指摘される人物をかばうのはセカンドレイプだということがわからないのか」と今すぐ筆者の横っ面を引っ叩きたくなる人も多いと思う。しかし、筆者は日本社会のためにも、松本さんは芸能活動を継続すべきだったと考えている。
というのも、「文春砲は正義の裁き」という誤った風潮がさらに広まってしまうからだ。