《発生から14日目の駆け足の訪問に「今更来たのか」「励ましが足りない」と冷ややかな視線も向けられた》
《地震が起きた1日から身を寄せる井上美紀さん(75)は「首相の地震対応は遅い」と手厳しい。一部の教室などを回って30分間程度で切り上げた姿を見つめ「体育館で皆を大声で励ましたりしてくれれば、心持ちも違うのに」と不満がった》(「産経新聞」1月14日)
《「裏金問題もある中でのパフォーマンスではないか」。3階の教室に身を寄せる市内の60代女性の反応は冷ややかだ。「わずかな時間、1階をのぞいただけでヘリコプターで帰っていった。どんな思いで来たのかもわからない」と取材に不満をこぼした》(毎日新聞・1月14日)
被災者に何一つ希望を与えられず、総理視察は大失敗に終わった。そもそもあれだけ国民に対して「被災地へ入るな」と言っておきながら、自分だけは行くというのはメッセージとして最悪だろう。岸田官邸はもはや、自分たちのやっていることと言っていることの整合性すらとれない状態なのだろう。
災害危機管理の専門家が考察
「初動には人災の要素を感じます」
そんな中、石川県の災害危機管理アドバイザーも務めてきた神戸大学名誉教授の室崎益輝氏が、能登半島地震について興味深い考察をしている。
《初動対応の遅れがとても気になりました。これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます》
《苦しんでいる被災者を目の前にして、「道路が渋滞するから控えて」ではなく、「公の活動を補完するために万難を排して来て下さい」と言うべきでした。マンパワー不足と専門的なノウハウの欠如で、後手後手の対応が続いてしまっている。政府は「お金は出します」というリップサービスではなく、関連死を防ぐなどの緊急ニーズに応えられる具体的な対策を提供すべきで、「必要な人材を出します」というサービスに徹するべきです》(「朝日新聞」1月14日)
被災地からここまで不信感を持たれる首相は、菅直人氏以来ではないか。危機にあって、適切な行動が取れないリーダーなど要らない。