政府のばらまき政策で
弱者に群がる悪質業者たち

 政府がこうもばらまき政策を行っていると、カネの匂いに誘われて「助成金コンサルタント」「補助金プランナー」などのいかがわしいビジネスから「給付金詐欺」までが、あちらこちらで勃興してくる。もちろん、誠実にコンサルタントとして活躍している人もいるので、全てが眉唾ものと言うつもりはない。

 以前から、口座開設屋というものは存在していた。かつて、事業を営む企業や個人事業主は銀行に当座預金があることがステータスであり、信用度を測るバロメーターになっていた。

「この会社、A銀行の手形なんだ。いい会社じゃん!」

 小切手や手形に記された銀行名を読めば、その企業・事業主のメイン銀行が分かる。こんな具合で、メガバンクの前身である都市銀行に当座預金を開設し、箔(はく)を付けたくなるのだ。

 口座開設屋は、資金難にあえいでいる会社へ声をかけ、さまざまな銀行の当座預金開設の指南を行い、作った口座をあちらこちらへ転売していく。その口座は、振り込め詐欺の受け皿口座として使われることもある。現在では、手形や小切手の支払いに使われる「当座預金」の口座を開設する機会もほとんどなくなったが、それでも普通預金口座の闇売買は増える一方だ。

 開設した口座をそのまま転売するケースもあれば、事業を行っていない休眠会社の口座を高値で買い取り転売するケースもある。

書影『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)
目黒冬弥 著

 たとえば、休眠しているECサイト運営業社に複数の個人から定期的に5万円ずつ振り込みがあり、その入金をすぐにビットコイン業者へ振り込んでいる…多数のシングルマザーからなけなしの金をだまし取った詐欺集団のエピソードは、拙著「メガバンク銀行員ぐだぐだ日記」に記してある。詐欺集団に私がどのように対峙したか、読んでみてほしい。

 今日の生活費さえ喉から手が出るほど苦しんでいる人の弱みにつけこんでくるやからたち。そんな者たちへ正義の鉄ついを食らわすのは警察に任せたいところだが、残念ながら警察という組織は驚くほどに腰が重い人種の集まりだ。

 つらいことも、うれしいことも…この長い年月、本当に多くの出来事があった。そして今日も、この銀行に感謝しながら勤務している。

(現役行員 目黒冬弥)