「どこまであんたたちは迷惑かけるのよ!」
本人確認の質問をすると怒りが爆発

「き、給付金…ですか?」

「物価高騰対策の給付金よ。さっき市役所に電話したら『手続きしてるから、後は銀行が入金してくれるのを待て』と言われたのよ。おたくが止めているんじゃないの?」

「かしこまりました。状況を確認いたしますので、お名前と口座番号を教えていただけますか?お調べいたしまして、改めてこちらからお届けいただいている電話番号におかけ直します」

 これがマニュアル通りの銀行の回答だ。電話の相手が本人かどうか確かめるためにも、一度電話を切り、あらかじめ銀行に届けている電話番号へ折り返す。さらに生年月日や住所、使っているクレジットカードのブランド、直近におけるATMの引き出し額と場所など、本人しか知り得ない情報を複数質問することにより、本人かどうかを判断する。

 しかし、最初から怒りモードで電話してくる相手には、こんな質問は火に油を注ぐようなもの。銀行にとっては個人情報の漏えいを防ぐ目的であっても、相手にとっては時間稼ぎをしているように映ってしまう。

「いつ返事くれるのよ!」

「そうですね、1時間ほどお時間をいただけますか?」

「遅いわよ!じゃあ1時間したら、お金入っているのね」

「いや、そうではありません。給付金はおそらく市役所が振り込むと思いますが、市役所がどちらの銀行から振り込みをしてくるのかは、私どもの銀行としては分からないのと…」

「市役所にはもう聞きました!手続きしていると言ったわ。あんたたちのミスじゃないの?ほら、いつものシステム障害じゃないの?どこまであんたたちは迷惑かけるのよ!」

 まさか、市役所は銀行のせいにはしていないだろうが…。

 給付金を受け取るまでの流れは、おおよそ次の通りだ。

 給付金の種類にもよるが、まず市役所の担当課が給付金を出してよいかを審査する。審査の結果、問題なく給付金を出せる者には、あらかじめ指定した金融機関の口座へ給付金を振り込む準備にかかる。

 市の公金は、各都道府県の指定金融機関が扱う。この指定金融機関は、地元で最有力の地銀が担っている。神奈川県なら横浜銀行、千葉県なら千葉銀行といったところだ。そこから給付金希望者が指定する銀行口座に振り込みが行われ、受け取ることができる。