私たちは会話中、84秒に一度は「何?」「誰?」「え?」などのキーワードで会話を修復している。短い単語を臨機応変に使い分ける高度なメカニズムの裏には、相手に協力的であろうとするヒトの特性があった。
※本稿は、ニック・エンフィールド『会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか』(夏目大訳)(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
会話の流れを修復する
会話は次々に話者を交代しながら止まることなく続いていく。その間には、余計な雑音が入り込むこともあれば、注意が散漫になることも、言っていることが不明瞭でよくわからないこともある。会話の進行は速い。
また、話者が交代すると、会話はどの方向に流れて行くかわからない。当然、途中で問題が発生することはある。相手の言ったことを聞き逃すこともあれば、何を言ったか理解できないこともあるだろう。使われた言葉が間違っていることもあるし、別の言葉と聞き間違えることもある。雑音で聞き取れないこともある。そういう問題は即座に解決しなくてはいけない。急がないと解決の機会はすぐに失われてしまう。
会話の途中で問題が発生した場合、その解決の作業は大きく二つの段階に分かれる。
最初は、問題が発生したことを察知し、解決が必要なことを知らせるという段階だ。そして次は、問題の箇所を修復して、実際に問題を解決する段階である。時には、すべての作業を一人の人が行う場合もある。問題発生の察知と問題箇所の修復の両方を一人でするわけだ。自己発見、自己修復ということである(例えば”First a bro?uh a yellow and a green disk〔まず、茶色──あのー、黄色ですね、それと緑の点があります〕”という発言をした人は、この自己発見、自己修復をしていることになる)。もちろん、問題を察知する人と、問題箇所の修復をする人が異なる場合もある。
例を二つ見てみよう。どちらも電話での会話で、言語は英語だ。