前々回(第24回)までは、「セールスの場合」「問題解決/改善の場合」「新規事業/変革の場合」のパターン別に、どうやって現状を把握していくかのポイントを整理した。いずれにしても、相手から引き出す情報が多ければ多いほど、目的は達成しやすくなるのはたしか。そこで今回と次回の2回にわたってコミュニケーション上のコツを紹介する。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。
相手に吐露させるヒアリングのコツ
問題の把握具合、共有具合によって会議のアウトプットが変わるからこそ、ヒアリングの技術を磨くことに意味があります。周りを見渡してみてください。「この人だと喋りやすい」と、ついつい喋っちゃう人がいませんか。そういう人を目指しましょう。
まず、第一歩は相手を乗せることです。ですが、私たちが日本にいるときのように振る舞うと、相手はノリノリになるどころか、盛り下がってしまいます。
「傾聴する」という言葉があるくらいで、私たち日本人は人の話を聞くのが得意そうですが、実は、私たちが真剣に聞けば聞こうとするほど、海外の方からすると「聞く気があるのか?」と思われてしまうことがあるのです。
ある企業の研修に立ち会ったときのことです。冒頭で来日中のヨーロッパ人の重役が、自社の置かれている状況や、その研修に期待することを40分くらいかけてプレゼンしました。聞き手は、日本人のミドルマネジメント層20名くらいです。皆、一言も聞き洩らさないようにと、身じろぎせず集中して傾聴していました。部屋にはピーンと空気が張りつめているように感じられたくらいです。
最後に、ヨーロッパ人の重役が「Any questions?」(→何か質問はありますか)と聞きましたが、誰も質問しようとしませんでした。その重役は後で「私の話は退屈だったのかな。興味がないのかな」と愚痴をこぼしていました。
日本人側からしたら、苦手な英語でも何とか聞き取れて大満足だったかもしれませんが、その重役からしたら、石像に話しかけているような、居心地の悪い時間だったはずです。質問や意見をどんどん交換し、相互理解を深めるのがグローバルなのです。1つも質問が出ないということは、興味がなかったということになりかねません。
グローバル・モードのコミュニケーションの基本は「確認し合う」ことです。かすかに理解を示すのではなく、アクティブなリスニングが必要です。身振り手振りを使って明示的に「大丈夫、わかっているよ」とアピールし、わからないことがあれば、その都度、質問していく。「聞いています」ということを態度で示すのです。
そうでなければ、相手は乗ってくれません。それどころか、「興味がないのでは」と思われて、出てくる情報も出ず、状況把握は浅くぬるい形で終わるでしょう。
相手に気持ちよく話してもらうために、「相手を乗せる」「堂々と話を止める」「積極的に質問する」「とにかく笑顔」の4つのアクションを取りましょう。