素直さが最も表れるのは、感謝の気持ちを伝えるときでしょう。その際に使われる代表的な言葉が「ありがとう」です。

「ありがとう」と言われて、いやな気持ちになる人はいません。「ありがとう」を言うだけで、好感をもってもらえる可能性は高いでしょう。

 そこに、心が込められていると、相手は感動し、「あぁ、こんなに喜んでくれた。やってあげてよかったな。また何かあれば、助けてあげよう」と思ってくれるかもしれません。

「ありがとう」と感謝の言葉を口にするのは、どんなときでしょうか。贈り物やご馳走してもらったときなど、何か「嬉しいこと」をしてもらったときを思い浮かべる人が多いと思います。

 でも、もっと大切なシーンがあります。上司や同僚、親など、人に注意されたときです。自分の至らなさゆえのミスに対する注意は、直すことで必ず「成長」につながります。

「成長のために注意してくれている」=「(よくよく考えれば)嬉しいこと」ですから、感謝をするのが当たり前です。「注意してくださって、ありがとうございます」と伝えましょう。

 上司や先輩は、注意をした後輩から素直に言われれば、「もっと成長させてあげたい」「もっと伸ばしてあげたい」と思うものです。注意されたときの素直な「ありがとうございます」は、成長を加速させます。

 ではどうすれば、心のこもった「ありがとう」が伝えられるのでしょうか。

 私は研修医たちに教える機会があると、「『ありがとう』を100回言ってみて」と実際にやってもらうこともあります。しかし、OKを出せるレベルまではなかなか到達しません。

 そんなとき、私はこう言います。「両親や親友、恋人など、大切な人との最後の別れで感謝を伝えるとしたら、どんなふうに『ありがとう』を伝える?」。すると、研修医たちはピンとくるようで、心のこもった「ありがとう」を言えるようになります。

 心を込めることができたら、体をまっすぐに相手に向けて、「ありがとう」と言います。これが、パーフェクトな「ありがとう」です。完璧な「ありがとう」を言える人は、意外と少ないものです。パーフェクトにできれば、必ず、相手を感動させることができ、強烈な好印象を与えられます。

 人との関わりに感謝の気持ちをもつと、一瞬一瞬の時間を大切にするようになります。感謝の気持ちをもつことは、「いま」を大切に生きることにつながるのです。