株式投資をする人たちの間で大きな支持を集める話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズを答えるだけで「投資のコツ」をつかめる手軽さが人気を博し、絶賛の声が尽きない。
本稿前半では、『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に、「株で勝つためのチャートの使い方」について教えてもらった。さらに本稿後半では、特別に『株トレ』から一部を抜粋して紹介する。
株で勝てる人はトレンド相場で稼ぐ
――窪田さんは『株トレ』のなかで、「孫子の兵法」を引用しています。「株」と「孫子の兵法」は、どのようなところが似ていると考えていますか?
窪田真之(以下、窪田):私は「孫子の兵法」が大好きで、よく株のトレードを軍隊のイメージでたとえます。
株の「売り」「買い」は合戦でぶつかり合う両軍のようなもの。チャートは、売りと買い、どちらの軍が強いのか形勢判断を下すためのツールです。
株の相場には、大きく分けてボックス相場とトレンド相場があり、稼げるのはトレンド相場です。
ボックス相場は、一定の価格帯で上下している相場のことです。売りと買い、両軍の勢いが拮抗していてどちらが有利か判断できません。
一方トレンド相場は、株価が一方向に動いている相場のことです。両軍の勢いに大きな差があるため、個人投資家は勢いが強い方の軍に参加することで、勝てる確率を上げることができます。
「風林火山」という言葉がありますよね。多くの人は武田信玄の旗印として認識していますが、もともとは「孫子の兵法」の言葉です。
両軍が堅い陣地や陣形で向き合っているときは、下手に動くとひどい目に遭います。林のように静かに、山のようにどっしりと動かないことが肝心です。
しかし、戦局が動いて、自分が有利な状況になったときは、風のように素早く、火のように激しく攻めなければなりません。
状況を見極めて、動くときは動くし、じっとしているときはじっとしている。これは株の売買にとても似ていると感じます。
チャートの使い方が上手い人は、ボックス相場では動かず、トレンドが出た時に、勢いが強い方に素早く回ることで、利益を得ます。
ただし、株価が移動平均線から大きく離れたときは要注意
――チャートで形勢を判断する際に、他に気をつけるポイントはありますか?
窪田:チャートから読み取れる情報はこれだけではありません。
株価を「前線部隊」、移動平均線を「補給部隊」と捉えるとわかりやすいと思います。
前線部隊が好調な場合でも、補給部隊と大きく離れてしまったときには注意が必要です。
「孫子の兵法」にも書かれていますが、前線部隊が好調でどんどん先へ行ってしまう場合、たいてい兵站が伸びてしまいます。
騎馬隊に比べて歩兵は遅いため、補給部隊はさらに後ろに伸びてしまう。そのような軍隊が勝ち続けるのは難しいでしょうね。
株も同じで、どんなに好調な株でも、株価と移動平均線が大きく離れると、ちょっと売りが入るだけで、一気に前線が崩れるリスクがあります。
『株トレ』のクイズに挑戦
財務良好のK社は、過去10年連続で最高益を更新してきたITサービスの成長企業。国内で利益を稼いできましたが、米国事業は赤字です。
今期、赤字の米国事業から撤退するために特別損失を計上。最終損益が上場来初の赤字に転落すると発表したところ、株価が急落しました。
一方L社は、東証グロース(旧東証マザーズ)上場のバイオ企業です。遺伝子治療の開発を始めると発表したところ、株価が急騰しています。
さて、K社とL社、買うならどっち?
正解は……
買うなら、K社。
13週移動平均線からのかい離率を見る
K社の移動平均線を見てください。3ヵ月前は横ばいだったのに、少しずつ下向きになっています。トレンドに逆らわないという意味では、こういう株は原則「売り」で、買うべきでありません。
ただし、例外もあります。株価が悪材料に過剰反応して急落、移動平均線からの下方かい離率が大きくなり過ぎた時です。
下げ過ぎの反動で「リバウンド」が期待できます。K社は、株価が13週移動平均線から25%も下に離れています。
私はここで少し買ってみて良いと思います。
短期的なリバウンド狙いもありますが、長期投資でも少し買ってみたいところです。今期赤字の米国事業から撤退するので、来期以降、利益が拡大する期待があるからです。
L社は夢はあるものの、将来遺伝子治療の開発に成功して収益が得られるようになるかわかりません。
開発に成功するとしても、実際に利益が出るのは何年も先です。遠い将来の夢の実現を期待して、株価は短期的に急騰、既に13週移動平均線からの上方かい離率が25%まで拡大しています。L社の株は加熱しているので、売って良いと思います。
K社は、日本のIT成長企業によくある事例です。国内で高収益を稼いで成長しているのに、海外では赤字続きというパターンです。国内で強くても海外では通用しないのが、残念です。
(本稿は、『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』から抜粋・編集したものです。)