「残念ながら、釜萢(敏)氏はこれらの会員の期待に沿う候補ではありません。ぜひ、会員の期待に応えられる小林孝一郎氏の選任をお願いするものであります」
岡山県医師連盟の松山正春委員長(岡山県医師会長)は1月中旬、日本医師連盟(委員長=松本吉郎・日医会長)の25年参院選・組織内候補選定に携わる執行委員に宛てた文書で、そう訴えた。岡山県医連は、日医連の過去の会員アンケートで50歳未満の若い候補の待望論が根強かったことなどを踏まえて、主張した。
今回選ぶ組織内候補は、任期満了で退く見込みの自民党・羽生田俊氏(元日医副会長)の後継。日医連は1月5~12日、組織内候補を選ぶために公募を実施した。届け出たのは2氏。群馬県医師連盟の推薦を受ける日医常任理事の釜萢氏(70)と、岡山県医師連盟の推薦を受ける元県議の小林氏(46)だった。
東京都医師政治連盟(委員長=尾﨑治夫・東京都医会長)は、元自民党衆院議員の安藤高夫氏(64)を推し、安藤氏も公募に応じる方向で準備を進めていた。だが、安藤氏は東京28区(練馬区東部)で次期衆院選候補者に選ばれており、12日の公募締め切りまでに「自民党側との調整がつかなかった」(都医連関係者)ことから、断念せざるを得なかった。
12日に「釜萢氏対小林氏」という構図が固まり、16日の常任執行委員会で一定の結論を出し、30日の執行委員会で正式に決定する流れだったため、冒頭に示した松山氏からの文書は、いわば“最後のお願い”だった。それは、もちろん劣勢を意識してのことだ。
少なくとも23年12月下旬までは、逸早く手を挙げた小林氏は有力な候補であり、続くかたちで安藤氏が手を挙げると表明し、「小林氏対安藤氏」になるというのが、多くの医師会関係者の見立てだった。
ところが、年末から年始にかけて、釜萢氏が急遽、名乗りを上げ、一気に本命候補に浮上した。そして、16日の日医連常任執行委員会では「満場一致」で釜萢氏が選ばれた。この背景にはどんなことがあり、なぜ釜萢氏に決まったのか。6月に予定する次期日医会長選にも、少なからず影響が及びそうな情勢となっている。