「おじさんの未払い税金を支払え」
税務署から突然届いた督促状!?

 数年前、私と同年代のお客様から連絡を受けました。

「亡くなった叔父が税金を滞納していたらしく、税務署から私宛てに督促状が届きました」

「叔父さんには家族がいましたか?」

「はい、奥さんと子供が2人います」

「おかしいなぁ、納税義務はその家族が引き継いでいるはずですが……。振り込め詐欺かもしれないので、その書類をファクスしてください」

 送られてきた書類は確かに税務署からのもので、そこには「叔父さんの相続人が相続放棄したため、あなたが納税義務を引き継ぎました」という内容の文言がありました。

「相続放棄」も、非常に誤解が多いものです。これは、相続人が承継する財産債務の一切を引き継がなくする民法上の手続きをいいます。通常、財産よりも債務が大きい場合は「相続放棄すれば返済しなくてよい」とアドバイスされますが、実はそのアドバイスは完全ではありません。冒頭のケースでは夫の借金が多額であったため、相続人である妻と子供は放棄したと思われます。だからといって借金や滞納している税金、すなわち債務がこの世から消えるわけではありません。これがもっともよく誤解されている点です。

 妻と子供が放棄した場合、債務は血族相続人の第2順位である「父母」が引き継ぐことになります。今回は父母がすでに他界していたため、第3順位である兄弟姉妹、およびその子が引き継ぐことになったのです。

 彼らは叔父さんに借金があったこと、家族が相続放棄したことなど何も知らされていなかったため、大騒ぎになりました。「自分の親の借金ならまだしも、叔父さんの未払いの税金!しかも家族がいるのに、われわれが払うなんて」と。

 よく聞いてみると相談者の他に、同じ通知を受けていた親戚が7人いたことがわかりました。その後、それぞれが話し合い「自分たちも全員そろって放棄しよう」という結論に達したそうです。

 このように、親戚同士が連絡を取り合える状況(仲のいい状態)であれば問題はありません。しかし、通知を受け取った人が個々に放棄をすると、債権者は放棄していない人へ取り立てに行くため、取り残された人が結局は負担することになります。そのため親戚中で「放棄の連鎖」が生じることになるのです。