1980年代は、子役からアイドル歌手へとキャリアを進めていた日髙のり子さんが『タッチ』の浅倉南役など声優として華々しく活躍することもありましたが、はっきりといまのように「アイドル」的に女性声優が人気を集めているなと、意識した声優は、冨永みーなさんでした。『魔法の妖精ペルシャ』のキャラクターソングやいまでいう「萌えソング」のような曲を続々とリリースし、僕が高校時代に友人に誘われて初めて参加した握手会は冨永みーなさんでした。

 同時期には『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイを演じた、飯島真理さんの存在もありました。

めぐ姉、へきへき、ほっちゃん、ゆかりん
歌う女性声優の認知が進んだ1990年代

 その後1990年代になって、林原めぐみさんや椎名へきるさんらが爆発的に人気を博しました。

 林原さんや同時代のみなさんの活動で、「歌手活動もする女性声優」という確固たる基盤ができたのは事実ですが、声優のアイドル的な活動を決定づけたのは、その後に出てきた堀江由衣さんや田村ゆかりさんの世代ではないかと思います。

 堀江さん、田村さんはふたりともアイドルが好きで、「やまとなでしこ」としてアイドルユニット的なコンビで活動もしましたし、堀江さんはAice5(堀江由衣、神田朱未、たかはし智秋、浅野真澄、木村まどか〈敬称略〉による声優アイドルユニット)としての活動もありました。

 近年は男性アイドルものの企画が増えています。これは女性アイドルものからの流れで出てきたように言う人もいますが、『アンジェリーク』などのネオロマンス作品のイベントでの男性声優のアイドル的な人気はもとからありました。アニメではありませんが、乙女ゲームの方面で男性声優のアイドル化の下地は作られていました。

 こうして挙げたのは、あくまでほんの一例です。ほかにも様々な形で、声優の歴史の黎明期から、タレント的な活動は存在していました。「昔の声優は裏方仕事だったのに、最近は変わってしまった」ということに対する違和感をわかっていただけたでしょうか。

 もちろんそれぞれの人によってアイドル声優史観はあると思いますので異論は認めます。あくまで僕のなかのアイドル声優史観ということであり、こうした人生における体験がいまの仕事に繋がっているというお話でした。