発達障害は得意なことと不得意なことの差が大きいことが一番の特徴だ。ということは、自分の得意な分野の仕事を見つければ問題なく就労できると考えられるが、これがまた難しいのである。

 例えば検査の結果、言語性の能力が優位だったとしよう。であれば出版関係など言葉を扱う職に就こうとするが、出版社での編集者としての勤務はライターから届いた原稿をチェックするだけではない。取材の際は同行したり、会議や打ち合わせがある際は会議室の予約を取ったり、ライターとの信頼関係を築くためにコミュニケーションを取ったり、経費の精算などといった言葉を扱う以外の仕事も発生する。

 以前取材した介護士の当事者は、主な業務である身体介護は問題ないものの、日報を書くことが苦手で、誤字脱字や捺印漏れが発生し、仕事が終わらず残業や休日出勤が増えて二次障害として適応障害を抱えていた。

 この当事者の場合、人を介護する仕事自体は向いていたが、そこから派生する別の仕事に困難さがあったのだ。そうすると、自分の特性に合った仕事を見つけられたとしても、本業とは別の細かな雑用が発生すると一気に仕事ができなくなってしまうのだ。

 また、仕事が続かずに辞めてしまった場合、次の仕事を見つけるために就労移行支援事業所に通うこともあるだろう。これは事業所によって様々ではあるが、商品のラベル貼りといった、良い大学を出たその人にとってはとても簡単で単調で、人によってはプライドが傷つく作業だったりして達成感も得られない。

 見聞きしたことのある例としては、高学歴ではないがもともとパソコンに詳しい発達障害当事者の知人が就労移行支援事業所に通ったところ、エクセルもワードも問題なく扱え、作業が簡単過ぎてすぐに職を見つけるフェーズに移れたという。