生徒や教職員から集めた給食費と自治体の補助で運営される学校給食。最初に年間予算が確定しているため、物価高の影響をモロに受けて節約メニューを考案したり、逆に予算を余らせないために急きょ豪華な献立へ切り替えたりと、栄養士は調整に奔走するという。給食にまつわるおカネ事情とは? ※本稿は、松丸 奨『給食の謎 日本人の食生活の礎を探る』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
給食の予算不足が最大の恐怖
急激な物価上昇に栄養士はヒヤヒヤ
給食は、必ず決められた予算内で作らなければなりません。予算は、保護者と教職員から徴収する給食費と、自治体から補助される費用の総額です。
給食は1年単位の運営なので、「徴収した給食費から食材費を支払う」というサイクルを毎月繰り返し、年度末の3月には残金をできるだけ少なくして、0円に近い数値で会計を締めることを目指します。
献立作成ソフトに「食材の平均単価」の表示機能が備わっていますし、さらに最近の納品金額を献立作成ソフトに入力していけば、ある程度の金額予測ができるので予算管理に役立ちます。食材の値上がり・値下がりを予測しながら、すでに決めてある献立内容を微調整するのです。
1年を通して等しく予算を割り振るのではなく、メリハリをつけた配分をしていくのが、やりくり上手な栄養士です。予算いっぱいまで使った強気の献立を立てていく月、少し抑えていく月、といった按配です。
学校栄養士にとってもっとも怖いのは、予算が足りなくなることです。万が一、足りなくなったからといって「ひとり1000円追加徴収させていただきます」などと、あとから集金することは不可能です。
私自身は予算が足りなくなった経験はないのですが、予算管理に失敗して年度の途中でお金が足りなくなった事例を聞いたことはあります。
予算が足りなくなる大きな原因は、食材の値上がりです。急激な物価の上昇といった予期せぬ外部原因があると、計画通りにいかなくなってしまうのです。
とくにここ数年は世界情勢の悪化から来る急激な物価高のため、給食の予算は逼迫しています。本書を執筆している令和5(2023)年10月現在、私自身も「今年度はついに予算管理に失敗するかもしれない」という恐怖を抱えて献立と向き合う日々を送っています。