今回の記事は、このように前提条件が変わったことで楽天という会社の未来がどう変わるのかについての予測記事です。極めて不確実性が高い話題だという前提で、未来予測の話を進めてみたいと思います。

自転車操業の続く楽天は
「もうすぐ食べごろ」かもしれない

 ちょうど今週、2月14日に楽天グループの2023年12月期決算の発表がありました。良い点と悪い点を整理しますと、良い点としてはモバイルを除く中核事業はすべて売り上げ等を伸ばしていること、楽天モバイルの営業赤字は2022年の4590億円から2023年は3230億円へと1300億円も減っていること、そして2024年の資金調達のめどが大体ついたということです。

 一方で悪い点は、楽天モバイルの契約回線数が609万回線と増えてはいるけれども大幅には増えていないことです。結局のところ、当面の目標である800万~1000万回線に早期に到達できない限りは、状況の好転は見込めないはずです。

 その決算発表の後、ふたつの変化を目にしました。ひとつは楽天グループの5年連続赤字転落を報道するヤフーニュースのコメント欄です。楽天モバイルを応援するユーザーの声で溢れていたのです。悪いニュースに対してこれほどの数の好意的なコメントが寄せられるのは異例です。ふたつめは翌日の株価です。楽天グループの株価が一時ストップ高で15%も上昇したのです。

 これまで楽天は、日干し攻勢に遭っている戦国大名のような状況でした。日干しというのは1.8兆円の有利子負債の借り換え時期がつぎつぎと到来することを指します。城内の備蓄米にあたるキャッシュは枯渇しているので、いつ干上がってもおかしくはない状況です。

 お金を貸している側は、備蓄米がないなら城内にある宝物を切り売りすればとささやきます。城内には莫大な価値を持つ宝物が眠っているので、それが米と引き換えで手に入るとなれば貸し手側はうれしい限り。こうして1年先まではめどが立ったが、その後はまだわからない。表現は悪いのですが、ほぼほぼそのような戦の最中に楽天グループはおかれていました。

 金融の世界では、企業は腐りかけたところがおいしいものです。熟したところで果実をもぎ取ってもうけるのが、金融のビジネスモデルです。楽天銀行、楽天証券の次に楽天カードがたぶん売りに出されるだろうというところに来ていたのです。

 ところが、「今年の秋から来年の春あたり、楽天は食べごろになるから、それまで待とう」と思っていた人たちにとって、皮肉な話ですが、今回のKDDIによるローソンTOBがその計算を狂わせたのではないか? というのが私の見立てです。楽天の株価が15%上がった理由は、投資家が「楽天本体の株を持っていたら高値で誰かが買ってくれる」と気づいたせいではないでしょうか。

 つまり、食べごろになるまで待っていたら、カラスに果実をさらわれるかもしれないような新たな状況が生まれたのです。

 そのカラスが誰なのか、そして楽天の生存確率は上がったのか? そのことを考えるために、楽天から見たら今回のコンビニ再編はどう見えるのかを考えてみましょう。