本連載の第3回では与謝野大臣のトンデモ発言を題材にしましたが、先週の8月29日に政府が原材料高などへの対応として「安心実現のための緊急総合対策」を発表しました。そこで、今回はそれらを題材に、政府がどこまでクリエイティブ産業などの新たな産業を後押しする気があるのかを考えてみましょう。
小さなバラマキ
大きなハリボテ
まず、今回の緊急総合経済対策は全体としてどう評価すべきでしょうか。個人的には幾つかの大事なポイントがあると思っています。
第一に、メディアでも言われているように「バラマキ」政策であることは間違いありません。農業や輸送などの特定業界が原理原則なしに裁量的にピックアップされ、そこにカネがばらまかれているからです。
ただ、そもそも民主主義の下ではバラマキは必要悪として常に生じる(その意味で小泉政権は特異な存在だった)ことを考えると、今年末に定額減税の規模が決まらないと最終的な判断はできませんが、国費1.8兆円という数字は、最小限のバラマキにとどめた点では評価できるのではないでしょうか。
ちなみに、民主党も「バラマキだ」と批判していますが、彼ら自身がもっとすごいバラマキ策を主張していることを考えると、悪い冗談としか思えません。昨年の参院選以来の与野党のバラマキ競争のきっかけが民主党にあることを考えると、民主党こそ批判する前に深く反省すべきです。
第二に、対策全体を貫く哲学がないということです。原材料価格の高騰への対応が主眼のはずなのに、何故か年金・医療・介護や子育てといった政策まで含まれており、「政策のごった煮」的な印象は免れません。その結果、総論部分はほとんど意味不明な出来の悪い作文になっています。ある有名経済学者がプライベートな場で「これは “与党政治家の安心実現のための緊急選挙対策”だ」と酷評していましたが、的を射ているのではないでしょうか。