新NISA制度が始まり、資産運用への関心が高まっている。金融にまつわる情報が溢れている今こそ、「お金の教養」を身につけておきたい。金融と経済のしくみを60分で楽しく学べる『アメリカの子どもが読んでいるお金のしくみ』が発売された。本稿では本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

5分で学ぶお金の教養「お金の起源にまつわる興味深い話」Photo: Adobe Stock

お金がなかった時代の人々の暮らし

 お金というものができるよりも何千年も前、人びとは自給自足の生活を送っていた。

 小さな村で自分自身や子どもたちの世話をするシンプルな生活で、おもに狩りをすることによって生きのびてきた。

 人びとは食べるものがなくなると別の場所に移動した。この時代にはお金は必要ではなかった。

5分で学ぶお金の教養「お金の起源にまつわる興味深い話」お金が生まれる前、私たちの祖先は自給自足の暮らしをしていた

 時がたつにつれて、人びとは特別なスキルを身につけていった。

 牛や豚、羊を育てることを学ぶ人もいた。なかには野菜や穀物を植えて育てるのが得意な人もいた。魚つりや大工仕事、山で金や宝石を掘りおこす技術やものづくりの技術をみがいた人たちもいた。

 こうして人びとは何かを専門に扱うことを学んだ。

 つまり、本当に得意とする一つのことを選んだということだ。

 専門に扱うものを持つことによって生産する力が高まり、その結果、必要とする以上のたくさんの商品が生産されるようになった。

 専門に扱うものを持つことによって、人びとは自分では作れないもの、または自分ではできない仕事をおたがいに取引して得ようと思うようになった。

 たとえば、農家の人は家を建てるために大工の助けを必要としただろうし、大工は食べものを得るのに農家の助けを必要としただろう。

 取引はこうして始まったんだ。

 けれどこのときにはまだ、紙幣やコインは使われていなかった。その時代、人びとは物々交換をしていたんだ。

物々交換で必要なものを手に入れる

 物々交換とは、お金を使わずに商品やサービスを交換することだ。

 これは、ベースボールカードやゲームソフトの交換、または友だちとお弁当のおかずを交換することに似ている。

 お金というものができる前に、農家の人は1頭の牛を2頭の豚と交換したり、大工は食料や道具をもらって、その代わりに納屋を建ててあげたりしていたんだ。

5分で学ぶお金の教養「お金の起源にまつわる興味深い話」取引成立だね!

 物々交換では、自分の持ちものやサービスを交換してくれる人を見つけることができればよいが、いつもそうとは限らない。

 牛を飼っている人が、「自分の牛1頭の価値は、少なくとも豚2頭の価値と同じだ」と思っているとしよう。

 それなのに、2頭の豚と交換してくれる豚の飼い主が見つからなかったらどうなるだろう?

 もし豚の飼い主が小さな豚を1頭しか持っていなかったら、牛の飼い主は自分の牛を豚ではなくパンや道具と交換するだろうか?

 おそらく牛の飼い主は、少なくとも牛1頭と同じ価値のものか、それ以上のものを見つけることができなければ交換しないだろう。

 つまり、物々交換はいつもできるわけではない。取引したいものと同じ価値のものを見つけるのがむずかしい場合は成立しないんだ。

5分で学ぶお金の教養「お金の起源にまつわる興味深い話」それじゃ交換できないよ!

 さて、取引が広がるにつれて、人びとは金(きん)や銀のような貴金属など、多くの商品を取引することを学んだ。

 なかでも金は、めずらしくて美しく、棒の形にすることができるので、取引の支払いに共通で使えるものとして受け入れられるようになったんだ。

 ちなみに、金の価値はその重さによって決まった。

 金が交換の手段として広く受け入れられたことで、取引はさかんになった。

 取引に金を使うことには、それなりの欠点もある。

 取引が大きくなると、取引する人はたくさんの重い金を運ばなければならなくなった。

 農場や大きな船を買いたいときには、どれだけたくさんの金を持ち運ぶ必要があったか想像してみてごらん。

お金の誕生

 そこで解決策が生まれた。取引する人は、自分たちの持っている金をほかの人たち、たとえば鍛冶屋や銀行に保管してもらうほうが簡単だということに気づいた。

 そして鍛冶屋と銀行は、預かった金の代わりに、どれだけの金が預けてあるかが書かれている約束手形を渡したんだ。

 約束手形を持っている人は、今度はそれを銀行に持っていって金と交換するか、ほかの取引のために使うかを選ぶことができた。

 それからどうなったと思う?

 約束手形の価値は預けてある金の価値と同じだから、約束手形は町中のお店などで広く使われるようになっていったんだ。

 取引する人たちは、このような約束手形を商品やサービスのための支払いとして受け入れた。

 その結果、約束手形や紙のお金(1ドル札、5ドル札、20ドル札など)が、商品やサービスの取引にいつも使われる交換の手段になった。

 コインは、最初は金や銀で作られていたけれど、すぐに銅やほかの金属が混じったものに変わった。

5分で学ぶお金の教養「お金の起源にまつわる興味深い話」交換の手段としてお金を使えるようになると、取引がさかんになった

現代では、信用によってお金の価値は保たれている

 面白いことに、現在使われているお金はもう、その価値を金が支えているわけではないし、お金を印刷するために使われている紙そのものにもほとんど価値はない。

 それでは、なぜ自分のお金にはまだ価値があるのか、と不思議に思うかもしれない。

 お金の価値を保つために、政府はその価値を保証しなければならない。

 保証とは、ある条件を守りましょうと約束すること。

 今使われているお金の価値は政府によって保証されていて、人びとは政府の保証を信用している。

 このようなシステム、つまり政府が保証して、人びとが政府を信用するというしくみが、お金の安定とお金の価値を守る働きをしているというわけなんだ。

(本稿は『アメリカの子どもが読んでいるお金のしくみ』から抜粋・編集したものです。)