新NISA制度が始まり、資産運用への関心が高まっている。金融にまつわる情報が溢れている今こそ、「お金の教養」を身につけておきたい。金融と経済のしくみを60分で楽しく学べる『アメリカの子どもが読んでいるお金のしくみ』が発売された。本書の翻訳者であり、20年以上にわたって外資系金融機関で働いてきたキャリアをもつ木村満子さんは「若い世代こそ、早いうちから金融を学ぶべき」と話す。そのわけを聞いてみると、納得せざるを得ない答えが返ってきた。

インフレ時代に必ず知っておきたい資産を守るために必要な行動Photo: Adobe Stock

知ってるつもりで、実は説明できないお金の用語

――ニュースで見聞きする「金融の用語」はたくさんありますが、「金利」や「インフレ」という言葉って、理解しているつもりで、実は説明するのが難しい概念ですよね。

木村満子(以下、木村):金利やインフレは実生活と直結しているお金の言葉ですが、意外としっかり説明できる人は多くないのではないでしょうか。

 私が住んでいるアメリカでは、今、本当に金利が高くて、政策金利が5%を超えている状況です。金利は、生活のあらゆるところに影響してくるわけですが、その一つが住宅ローンです。

 住宅は人生で最も大きな出費の一つですよね。住宅ローンの金利は、基本的には政策金利と連動しているので、政策金利が高くなるにつれて、住宅ローンの金利がとても高くなっている状況なんです。

 アメリカではクレジットスコアと呼ばれる個人の信用評価を数値化したものによって、住宅ローン金利も変動するのですが、クレジットスコアが高く、信用評価が良いとされている人たちでさえ、住宅ローンを今組むと、金利が7%を超える状況になっています。でも、みんながその金利でローンを組めるわけではなく、10%ぐらいの金利でないと住宅ローンを組めない人も、たくさんいるわけです。

――金利が変わることで家計の出費に大きな影響が出るわけですね。また、インフレという言葉もニュースでよく耳にするようになりましたね。

木村:日本の100円均一のダイソーって、実はアメリカでもすごく人気があって、私が住んでいる場所でも、車で10分ぐらいのところにダイソーがあるのですが、一番安い商品が1ドル75セント。日本円だと250円くらいでしょうか。目に見えて、どんどん商品の値段が上がっていることを実感しています。

 日本は約30年にわたってデフレが続いてきた国なので、モノの値段が上がるという感覚が薄い国だと思いますが、ここ数年で、多くの日本人がモノの値段が上がることを実感するようになってきたのではないでしょうか。

――インフレを経験してこなかったせいで、モノの値段が上がることに抵抗がある人は多いと思います。

木村:そうですよね。でも、日本のようにデフレが長く続いていた状況は特殊で、一般的な経済では、毎年少しずつモノの値段は上がっていきます。

 この本の中では、同じ20ドルをもってスーパーに行っても、カゴにいられる商品は、毎年毎年どんどん減っていくという話があります。つまり、毎年インフレが進んでいって、どんどんお金の価値は下がっていってしまうわけです。

インフレ時代、資産を守るためにできること

――今後日本でもインフレが進んでいったときに、生活を守るためにできることは何だと思いますか?

木村:日本は貯蓄の文化と言われますが、インフレが進むと、貯蓄しているだけでは、資産の価値が減っていってしまいます。

 少し前に「老後2,000万円問題」が話題になりましたよね。「老後の資金として2,000万円が必要」という試算が出て、「いかに老後の資金を形成するか」ということに注目が集まりました。

 インフレが進めば、今の若い人が老後を迎えた時には、必要な資金が3,000万円になるかもしれないし、もしかしたらもっと上がっている可能性だってあるわけです。

 インフレが進んでいくなかで、自分の資産を守り、生活を守るためには、投資をするしかないと思います。

 もちろん投資にはリスクがあるので、資産が減る可能性もありますが、長いスパンで考えたら、投資のリスクは大きく軽減することができます。だから、若い頃から投資を始めることはとても重要です。

――日本では投資よりも貯蓄への意識の方が根強いということもあって、若い頃から金融や投資の情報に触れる機会は少ないように感じます。「お小遣いの一部を貯金しなさい」と言う家庭はあるかもしれませんが、「投資しなさい」とはなかなか言わない気がします。

木村:貯蓄が一般的で、投資については教えてもらえない環境で育ったら、いつまでも投資を始められませんよね。私自身も、今振り返ると、金融機関で働いていたにもかかわらず、どうしてもっと早く投資を始めなかったのかと少し後悔しています。

 この本の著者であるウォルター・アンダルは、わが子に金融の基本を教えようと思った際に、良い教育材料がないことに不満を感じ、そのことがきっかけでこの本を書きました。知識ゼロでも楽しく読める本になっているので、この本がきっかけで投資にも興味を持つ人が増えればとてもうれしく思います。

木村満子

東京都出身。アメリカの大学を卒業後、東京と香港で25年間外資系金融機関にてさまざまなポジションを経験。コロナ禍を機にBABEL UNIVERSITY Professional School of Translationにて金融翻訳を学ぶ。2022年、早期引退しアメリカに移住。現在はラスベガス在住。