この2カ月足らずの間で、つみたて投資枠で毎月7万円を積立投資する設定にしていた会社員のMさん(48)は、2月に2度目の積み立てが終わった後、その商品を売却してしまいました。理由は「思っていた以上に増えたから」。翌年に枠が復活するなど新NISAになって改良された点を生かしている気持ちにもなっていたようですが、せっかくの複利のメリットを手放してしまった形です。3月からはまた仕切り直しをし、積み立てし直すことにしています。
生命保険や共済の積立金から
お金を借りて投資する人も
また、何人か見かけたのが、「家計から積立投資に充てるお金をねん出しにくいので、借り入れでお金を準備する」という方です。
借り入れといっても、貸金業者から借りるのではなく、自分が積み立てている制度の資産から、利息をつけて借りるというもの。具体的にいうと、小規模企業共済や生命保険からの借り入れです。
小規模企業共済の一般貸付では、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)を上限に、1.5%(2024年2月末)の利率で貸し付けを受けることができます。生命保険も終身保険や養老保険などの「解約返戻金」がある保険の中には、その解約返戻金の6~8割を上限に、貸し付けを受けられるものがあります。契約者貸付といいますが、これには当然に利息がかかり、その利率は契約時により異なります。
毎月、小規模企業共済や生命保険にお金を積み立て、そこからお金を借りて投資を積み立てる。何ともややこしいやり方です。なぜそんな方法を取っているのか聞いてみると、共済や生命保険に支払った分の「所得控除が期待できるから」というのです。
積み立てることで保障を得たり、受取金額を増やしたりしながら、控除された金額×自分の所得税率分の税金が戻るので、「保障を積み立てて(自分の所得税率分の)○%の運用ができている」と考えるようです。生命保険は年間最大12万円、小規模企業共済は掛け金の全額(年間最大84万円)までの控除が受けられます。そして所得税率は5%、10%、20%…と累進課税で、最大45%までありますから、かなり良い利率で運用できているといえるということなのだそう。所得税率が最高の運用益であるという税金ベースでの考え方なのです。