20年以上にわたり、のべ6000軒以上の家を片づけてきた「片づけのプロ」、seaさん。家事代行マッチングサービス「タスカジ」では口コミで人気に火がつき、「予約が取れない家政婦」と呼ばれている。2021年12月にはテレビ「セブンルール」にも出演するなど、話題に事欠かない。
そんなseaさんの片づけ術を集大成した書籍が『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。――いちばんシンプルな「片づけ」のルール』だ。この連載では、同書より一部を特別に抜粋・編集して公開する。
じつは1月から3月は、片づけの依頼が多いシーズンなのだという。「大掃除で片づけたのに、あっという間に散らかってしまった」「このままでは新年度を迎えられない!」という人からの依頼が増えるためだ。
なぜ、片づけはうまくいかないのか? 6000軒を片づけたからこそわかる、その原因について解説する。(初出:2022年2月5日)
「片づけ」=「捨てる」ことではありません
片づけサービスの依頼者さまと片づけ作業を開始すると、真っ先に「もっと捨てないとダメですよね?」と聞かれることが多いです。「いかに捨てるか」をテーマにした本もたくさんありますし、世間では「片づけ」=「捨てる」が王道のやり方だと思われているのかもしれません。
でも、めんどくさいをなくすために、「捨てる」ことは必須ではありません。むしろこの『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』という本は「モノを捨てるほど片づく」「捨てないと片づかない」というみなさんの思い込みを消し去るために書きました。
「捨てる」作業には向き不向きがあり、誰にでも有効な方法ではないのです。
「捨てる」のが苦行になる人もいる
20年以上片づけの仕事をしてきて、身に染みて感じたのは「捨てるのがつらい人がいかに多いか」ということです。捨てる作業だけで疲れてしまい中途半端な状態で力尽きてしまう人や、捨てるのが憂鬱すぎて片づけを先延ばししている人など、いろんなつまづきを見てきました。
実は「捨てる」作業は、片づけのほかの作業と性質が違います。捨てることだけは唯一、「後戻り」がきかないのです。
捨ててしまったものは、あとで「やっぱり残しておけばよかった!」と後悔しても取り戻せません。もう一度買うにも、手間とお金というコストがかかってしまいます。後戻りできない判断なので、緊張してとても疲れるのです。
人は一度モノを所有すると「このまま持っておきたい」という心理が働くそうです(これを行動経済学の用語で「現状維持バイアス」といいます)。
実際、100円ショップで買った小物でさえ、捨てるのをためらう依頼者さまは多いです。
もちろん、捨てるのが楽しい人もいます。モノの量が減れば片づけやすくなるのは事実ですし、それで心地よい暮らしを手に入れられたら言うことはありません。
けれど、それはライフスタイルのひとつにすぎません。そうでない人は、無理をしなくていいのです。大量に捨てなくても、片づく方法はあります。
みなさんには、「王道」以外にも手段があると知ってほしいのです。
必要なのは「捨てる」ではなく「分ける」技術
いいですか、「捨てる」に振り回されてはいけません。
モノを減らす=きれいになる、ではないのです。そんなことより重要なのは、使い終わったモノを毎回きちんと戻せることです。それができれば、片づいた状態がキープされ、リバウンドしません。
よく使うモノほど、戻しやすい場所にしまう。それだけで、散らかる要因はなくなります。
そのためには本書でもご紹介している「使うモノ」とそれ以外を分ける技術が必要です。
「分ける」は捨てるのと違ってやり直しがきく作業。失敗する怖さもないので、片づけのスピードを早めることができます。