「本音で話しているか」「建前を言っているか」を見破る質問
――具体的に、どのように相手の本音を探り当てていけばよいでしょうか?
安達 相手の本音にたどり着くには、まず「建前」を突き崩さないといけません。
実は、コンサルタントとしての優秀さも、この点にかかっています。というのも、相手の話の内容や言いぶりから、心の奥底にある「真意」をつかんで、それに対して「何を提案すれば相手の心に響くのか」を突き詰めて考えるのがコンサルの仕事だからです。
たとえば、「いま、社員のモチベーションアップが課題なんです」とクライアントから言われたとします。こういうケースで一番NGなのは、それを真に受けて「なるほど、じゃあそれを解決しましょう」と話を進めてしまうことです。
「口に出して言ったこと」が「本当に言いたいこと」だとはかぎらないですし、少なくとも、いきなり本音を言ってくれることはあまりないからです。
この場合、本音と建前を見分けるために効果的なのは、「では、モチベーションアップのためにいまやっている施策はありますか?」という質問です。
――どうしてこの質問が効果的なんですか?
安達 なぜなら、優先度の高い課題だと認識しているなら、既に何かしら取り組んでいるはずだからです。なので、「いや、まだ何も着手できていません」とクライアントが言い出すのであれば、「本当は差し迫った課題ではないんだな」と判断できます。
――でも、「まだ着手していないから、助けてほしい」と相手が思っている可能性はありませんか?
安達 いえ、経営者が「深刻な課題」だと捉えていたら、絶対に何らかの手を打つものです。「着手せずに放置している=経営的に我慢できる」ということであり、ビジネスの世界では「我慢できること」にお金は使われません。
なので、まだ手を打っていない=優先度が低いと考えるべきなんです。
――つまり、コンサルタントに「課題は何ですか」と聞かれたからとりあえず言ってみただけで、心の奥底で「本当にヤバい」という切迫感があるわけではないということですね。
安達 そういうことです。なので、そこで改めて「いま優先度が高いことは何ですか」と聞いてみると、「実は新しい販路の開拓に忙しい」と本音をポロッと言ったりするんです。
そうすれば、モチベーションアップよりも販路の開拓の方が喫緊の課題だとわかるので、コンサルタントとしてより的確な提案ができるようになるわけです。
このように、本音を聞き出すには、「相手の本気度を確かめる」ための具体的な質問が必要不可欠なんです。
――本音と建前は違うという、あらゆるコミュニケーションに通じる話ですね。
安達 人間はどうしてもカッコつけたがる生き物です。本音と建前という「二重構造」があるということを常に念頭に置いて行動しないと、簡単に足をすくわれてしまうので気をつけましょう。
(本稿は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏へのインタビューをもとに構成したものです)