ナメック星「宇宙一長い5分間」と大人の事情

【追悼・鳥山明】僕らはドラゴンボールの子どもだった...プールで「かめはめ波」を撃ち、シャンプーでスーパーサイヤ人になったあの日Photo:SOPA Images/gettyimages

 ドラゴンボールは大人への階段でもあった。

 けっして品行方正なだけの作品ではなく、初期はエッチな部分もあったし暴力シーンに顔をしかめる親もいた。でも、だからこそ子どもたちは惹かれた。

 月曜日が週刊少年ジャンプの発売日だが、前週の土曜日に買える店があった。買いに行くと「あまり人には言わないように」と釘を刺される。要は早売りしていたわけだ。後にそれがルール違反だと知った。

 漫画連載にアニメが追いつくのではと、子どもながらにソワソワしたこともあった。だがアニメの蛇の道は漫画よりもずっと長く、ナメック星になかなか来ない悟空はアニメではさらになかなか来なかった。いわゆる引き伸ばしだ。毎度毎度挟まれるナメック星の風景や風の音は今でも覚えている。

 フリーザが星が消滅するまで「あと5分」と言った後、2カ月以上に渡って戦いが繰り広げられたのはいまや伝説だ。そうした大人の都合を知ったのもドラゴンボールだった。当時はなんだか腹立たしかったが、今考えると製作側の苦労に頭が下がる。

 子どもの頃は悟空やベジータの強さに憧れるが、徐々に一番強くはなれないけれど努力を続けるクリリンに惹かれるようになり、やがてミスター・サタンの魅力もわかるようになった。そして大人になると、ドラゴンボールの凄さをより知ることになった。