さらに、伊能図を海外で発見するなど伊能忠敬研究の第一人者である渡辺一郎氏自身も、40代後半で伊能忠敬に関心を持ち、55歳定年を射程に置いて、第二の人生の目標として伊能図研究を掲げ、伊能図を探し始めたのだという。

定年退職は、それまでの仕事と
まったく違うことに挑戦するチャンス

 このような歴史に残る偉業を成し遂げるような人物は非常にまれである。だが、そのような結果や評価は別にして、引退後に、それまでの仕事とはまったく別の道に乗り出し、経済力を得るためというこれまでの目的は棚上げして、本当にやりたかったことに邁進してみるチャンスである。定年をそのように受け止めることで、新たな意欲が湧いてくるのではないだろうか。

 何かの成果につながるかどうかなど、考える必要はない。やりたいと思うことに没頭しているだけで、第二の人生の日々は間違いなく充実したものになっていくはずだ。 若い人たちの間では、「やりたいこと志向」が強まっている。そんなことを考える余裕なく仕事人生を駆け抜けてきた定年前後の人たちも、今こそやりたいことに思いを巡らせてみるときなのではないか。