「X経営モデル」の3層構造
3人のパネリストによるプレゼンテーションの後、名和氏が語ったのが「X経営モデル」だ。図に示したように、X経営モデルは3層で構成される。
「現場を守りながら、現場の声を吸い上げてイノベーションとマーケティングで成長を目指す。さらに、それをスケールさせ、あるいはピボットさせるのが経営変革力です。私は現場の層から経営の層に向かって順に、『守・破・離』と名付けました。現場の強みをミドル層・経営層につなぐ部分に、デジタルの使い所があります」(名和氏)
最近、名和氏は「匠(たくみ)から仕組み(しくみ)へ」というフレーズを使うことが多いという。
「たくみの技のままでは、横展開やスケールは難しい。標準化、つまり『型化』することでスケールが可能になります。型化によって、たくみの技は陳腐化するでしょう。たくみは型を踏まえたうえで、新たな創造を目指すでしょう。こうして、現場はさらに進化します。こうしたサイクルを回すうえで、サイバーフィジカルシステムは有効です」(名和氏)
物理空間の状況をセンサーで吸い上げて仮想空間に送る。仮想空間では可視化や解析が行われ、アクチュエーターを通じて物理空間に戻される。それにより、物理空間=現場は進化する。これがサイバーフィジカルシステムである。
さらに名和氏は、X経営モデルには「3つのX」があると解説する。現場から順に「X(Ex)-tension」〈拡張:ゆらぎ〉、「X(Cross)-coupling」〈異結合:つなぎ〉、「X(trans)-verse」〈越境:ずらし〉である。
「現場でゆらぎをつくるには、さまざまな実験が必要です。決められたことだけを実行するのでなく、少しゆらぎをつくって試してみる。その中で気づいたことを、他の分野の強みや知見とつないでみる。これがクロスカップリングで、その中から新しい市場が見えてきたり、イノベーションが生まれたりします」(名和氏)