ブリヂストンが目指すサステナブルなビジネスモデルへの変革
グローバルサステナビリティ戦略統括部門 統括部門長
稲継明宏氏
2004年、ブリヂストン入社。環境宣言のリファイン、環境長期目標の策定など、環境戦略策定に従事。2015年よりグローバル全体のCSR戦略企画を推進。2018年に経営企画部長としてグローバル本社の経営企画業務を担当した後、2019年からはグローバル全体のサステナビリティ戦略を主導している。
ブリヂストンは「最高の品質で社会に貢献」という不変の使命の下、2050年を見据えて「サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供する」というビジョンを掲げている。
「私たちはいま、サステナブルなビジネスモデルへの変革を進めています。高品質のタイヤの提供は中核事業ですが、同時に、お客様がタイヤを使う段階での価値の増幅を追求しています。価値増幅のためには、データ活用が欠かせません。パートナーとの信頼に基づくデータ共有も重要です」(稲継氏)
同社は、価値の増幅だけでなく、価値の循環への挑戦も始めた。その一例が、タイヤ一本一本を使い切ることでその価値を最大化する循環ビジネスモデルだ。バスやトラックなどを対象とするサブスクリプションサービスである。高品質のプレミアムタイヤを提供した後、リトレッドと呼ばれる、タイヤのトレッドゴム(路面と接する部分)の貼り替えを実施。リトレッド回数を増やせば、顧客のコスト削減、環境負荷の低減につながる。
「タイヤにセンサーをつけることで、空気圧や温度などタイヤの状況を細かく把握できます。路面に接する唯一の部品であるタイヤのデータは、安心・安全な運行の支援にも役立ちます。データは設計にもフィードバックされ、よりよい製品づくりに活かされます」(稲継氏)
花王のDXは「よきモノづくりのX(トランスフォーメーション)」
常務執行役員 DX戦略部門統括
村上由泰氏
1986年、花王に入社。2011年花王マレーシア 社長兼CEO、2014年スキンケア事業グループ長を経て、2018年執行役員 化粧品事業分野担当 およびカネボウ化粧品 代表取締役社長。2020年常務執行役員に就任し、2021年よりコンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター長を兼務。2023年からはDX戦略部門 統括(現任)。製造業から「UX創造企業」への転換を掲げ、消費者とつながるデジタル基盤の構築を先導している。
花王の企業活動のベースとなる価値観は「よきモノづくり」である。「モノ」には製品とサービス、体験が含まれる。いま、同社はその中身を変えようとしている。「ESGよきモノづくり」への変革である。
「従来の“大衆ニーズを満たすモノづくり”から、“生活者一人ひとりにとってなくてはならないモノづくり”に変えていく。『くらしと社会への価値』を分子ととらえ、これを高めながら、一方で、『くらしと社会への負荷』という分母を減らしていく。両方を追求することでよきモノづくりの変革を目指しています」(村上氏)
花王は、分母であるさまざまな環境負荷低減の施策を積極的に進めているが、プレゼンテーションで村上氏がフォーカスしたのが「分子」の活動だ。同社は、早くからDXによるオペレーショナルエクセレンスを推進してきた一方で、くらしと社会への価値を高めるために、「よきモノづくりの深化」と「未来の成長エンジンの探索」の両輪で事業DXを加速させている。
「花王のマーケティングの原点は、生活者をよく知り、生活者から学ぶことを起点とした価値創造サイクルです。このサイクルをデジタル技術でアップデートすることで、より速く・強く回していく。生活者と直接つながる双方向のデジタルプラットフォーム『My Kao』の構築を通して、この変革にチャレンジしているところです」(村上氏)
この「My Kao」は、オウンドメディアとして、情報提供、体験型コンテンツ、コミュニティ、購入などの機能を持つ一方で、「よきモノづくり」変革のための新しいマーケティング基盤としての役割が大きいと村上氏は語る。生活者との双方向での対話から、いままで以上に生活者に寄り添った「よきモノ(製品・サービス・体験)づくりサイクル」が高速で回せるという。その一例が、衣料用洗剤「アタックZERO」のスティック状の新商品だ。発売後、一部のユーザーの「パッケージが開けにくい」という声を受けて、すぐに新容器を試作してMy Kaoを通じて提供し、ユーザーの声を集めた。生活者との双方向コミュニケーションによって、花王における価値づくりのサイクルは回り続けている。