社会福祉士なら「介護離職ゼロ」を簡単に実現できる?

 私の会社で行っている年中無休の電話相談サービス「お困りごとホットライン」には、昨年一年間で約300人のビジネスケアラーからコンタクトがありました。そのうち半分は(非正規雇用者と比べ、介護離職による経済リスクが段違いに高い)正規雇用者でした。相談のほとんど(9割以上)は、電話・メール・LINE・ZOOMなどで解決手順をガイドすることで完結しましたが、当方が実務代行までサポートしたケースは24件でした。

 実務代行サービスを利用した24人の中身を見ると、いずれも老親の介護、それも認知症に関連するものです。

「お困りごとホットライン」への問い合わせ300件のうち、実務代行までサポートしたケース(筆者作成)「お困りごとホットライン」への問い合わせ300件のうち、実務代行までサポートしたケース(筆者作成) 拡大画像表示
【介護休業利用状況】*93日の介護休業取得
検討中 12人
申請中  5人
取得中  4人
取得済  3人

【老親の認知症タイプ】
アルツハイマー型 14人
レビー小体型 6人
前頭側頭型(ピック病) 4人

 相談者の悩みのうち3大ボトルネックは、(1)予算内で賄える介護施設の確保、(2)精神科病棟の確保(精神救急を含む)、(3)財産管理および財産承継の手続き……となっています。一般的なビジネスパーソンにとっては、職場を離れて93日間を充当したとしても解決できない悩み、言い換えれば、介護離職に追い込まれる直接的原因は主にこの3つだということです。しかしこれらは、社会福祉士であれば、日常的に対応していることばかりです。

 上述の通り、2016年の介護休業制度の法定義務化されたことを受け、大企業のほとんどが外部の相談窓口を用意したり、パソナグループから「仕事と介護の両立プラン」の作成支援を受けたりしていますが、残念ながら、こうした実務代行には対応してくれません。相談者にとっては、企業の委託先は、地域の公的窓口に相談するのと何ら変わりありません。結局は職場を離れ、仕事と家庭に支障をきたしながら、在宅家族介護を続けざるを得なくなる……というのが典型的な介護離職パターンになっています。