IoT(モノのインターネット)の
次の時代を考える

加藤 その素材はどれくらい硬いんですか。

川原 パンパンに空気を入れると、自転車のタイヤぐらいの硬さになります。でも、座席などは柔らかくできます。

江崎 立体構造物を、例えばハサミとノリみたいなもので作ると、それを使った(継ぎ目の)部分が一番弱くなるんですよ。でも、折り畳みのように、そうした部分がなくても展開できると弱い部分がなくなる。これは3Dプリンター(*3)も同じです。

*3[3Dプリンター]
コンピュータ上の3次元デジタルデータをもとにして、その物体を実際に作り出す機械のこと。紫外線をあてると硬化する液体樹脂を使ったり、素材粉末にレーザービームをあてて焼結させたりして作る。

瀧口 接合部分がないですからね。

江崎 そうすると、これまで作れなかったものが実際に作れるんです。材料や構造を上手に作ると、切ったり貼ったりしなくてもモノを作れるんです。

加藤 人間で言うと、急所がない状態ですよね。

瀧口 そうなると、製造業もかなり変わってきますね。

黒田 全体がわからない部分の専門家だと、このような発想には至らないんですよね。「今あるものをどれだけ早く動かすか」とか「どれだけ安くするか」ということばかりに一生懸命になる。そこしか最適化する部分がないですからね。でも、全体を考えたら「大きくごっそり変えたっていいじゃないか」という発想が出てくる。すると多様な解が見つかります。

瀧口 確かに、普通は「自動車は鉄でできている」ということを疑いませんもんね。

江崎 その意味で、「どうして車はタイヤで動いているんだっけ」という疑問を僕が最初に持ったのは、実は道路ってめちゃくちゃお金がかかるからなんですよ。インフラでは、道路と橋を作るコストがものすごく高い。では道路が必要なのはなぜかというと、タイヤで走っているからですが、そもそも動くなら空でもいいし、歩いてもいい。そう思うとインフラデザインはすごく変わりますよね。

川原 柔らかいロボットは、研究としてすごく面白いんですよ。固いと方程式で全部記述できるのでコントロールしやすいんですけど、柔らかいとこちらが思っているような動きをしないので、数学でどう扱っていいかわかりません。ですから、ハードなロボットを作っている学会とかに持っていくと「力出ないよね」とか「精密な制御ができないよね」と言われる。なので「これはハードなロボットと勝負をしてはいけない」と思うようになったんです。それで「じゃあ、何に使えるかな」ということを考えている中で出てきたのが、ホイポイカプセルなんですよ。