加藤 それは、ロボット的なところにフォーカスがあるんですか。それとも素材の部分ですか。

川原 というより、僕らがやりたかったのは「IoT(モノのインターネット)の次の時代を考える」ということです。3Dプリンターがモノ作りの根底を変えるし、電力などのエネルギーが無線で供給できるようになる。すると「自然界に存在する草木や虫みたいなものが、人工物で作れるような時代が来るんじゃないか」と思ったんです。そこで、新しい材料などを積極的に集めてきて、それを組み合わせて「今まで見たことがないようなものを作ってやろう」と考えたんです。結果、数ミリの小さな蛍みたいなものを人工的に作って飛ばしたら、なんか楽しいんじゃないかなというところからスタートしました。

「楽しい」から研究が始まると
イノベーションが加速する

黒田 「楽しい」と何がいいかというと、多くの人が興味を持つんです。多くの人が興味を持つと、アイデアがたくさん出てくる。すると、新しい価値が見えてきますよね。例えば今のホイポイカプセルの話を聞いていると、「車が畳めるなら車庫代がいらなくなるから、経済的にも楽になるじゃないか」とか、色々な副産物的なアイデアが出てくるじゃないですか。一方で、ひとりの人間が最初から価値や目標を決めてしまうと、その方向にしか進まない。

瀧口 「『楽しい』から研究が始まると、いろんな人がすごく興味を持ってくれる」ということは、それがダイバーシティに繋がって、さらにイノベーションが加速する。とてもいい循環が生まれますね。

江崎 その時に重要なのは「上手に褒める」ことだと思うんです。「これ、面白いね!」って。新しいアイデアって、最初はうまく動かないことが多いですよね。でも「これ面白いじゃん」みたいなことを言うと、多様性が尊重されてみんなやる気が出ますよね。